[資料]入選データ (略)
この計画によれば、「新神奈川方式」が実施に移されるはずの97年度には、「特色づくり」は「計画的に実施」されている段階にまで、進んでいるはずであった。そうでなければ、入選改変そのものが、宙に浮いてしまうだろう。こうして、各高校現場は、無理難題とも言えるこの課題に答えるため、「魅力プラン」を短期間で作成し、締切りに間に合わせて提出することになった。表向きは、すべてがスケジュールどおりに進んでいるように見えたかもしれない。しかし、こんな唐突で、無理な計画が、破綻することは、多少とも現実を知っているものであれば、十分に予想することができたはずである。(「高課研」報告から「新方式」作成までの経緯等については、本報告の2-(1)にまとめてある。また、さらに詳しく知りたい場合は、「新神奈川方式へのシナリオ」ねざす19号別冊 教育研究所発行が参考になる。)
○教科活動等において明確な特色をもつ学校では・・・
平成6年度・・・・「魅力プラン」の作成
平成7年度以降・・・これまでの特色づくりの継続
○現在もっている個性や特色を顕在化させ,特色づくりを行う学校では・・・
平成6年度・・・・・「魅力プラン」の作成
平成7年度・・・・・特色づくりのための具体的方法検討
平成8年度以降・・・特色づくりの計画的実施
3). 高課研審議中の中央の動き
ア.高等学校(全日制)への進学機会について
イ.公立高等学校入学者選抜制度I=ついて
- 高等学校の進学機会の現状と問題点
- 国民的教育機関としての高等学校教育の在り方について
- 今後の進学機会の在り方の基本的視点について
- 計画進学率の見直しとこれに関連する諸課題について
- 公立高等学校入学者選抜制度の現状と問題点について
- 国民的教育機関としての高等学校教育の在り方について
- 今後の選抜方法の在り方の基本的視点について
- 選抜方法の役割こついて
|
|
94年 |
1/12公立高校入学者選抜制度検討会議を発足(委員長は教育長) 5/19高校入試改革改善案(中間報告)を発表 学区外志願8%の拡大 普通科推薦制の導入 7/18入学者選抜制度改正大綱を策定 9/26「魅力と特色ある高校づくりの推進について」の教育長通知を出す |
項目 | 文部省通知 | 高課研報告 |
---|---|---|
多様な選抜方法 | 各高等学校・学科・コースごとの特色に応じて多様であることが望ましい | 特色ある学校・学科・専門コース等においては、その特色にふさわしい多様で弾力的な選抜方法を考える |
受験機会の複数化 | 多段階にわたり入学者選抜が実施されるよう十分配慮すること | 再度の機会を与え、受験機会の複数化や、受験生の希望により第2希望校を認めるといった志願のあり万、あるいは再募集のあり方などについて積極的に検討する必要がある |
学区 | 各高等学校に特色を持たせ、生徒の特性に応じた学校選択が可能になるような方向で検討する必要がある | *隣接学区の扱いについても考慮する必要がある *学区外志願の枠の扱い等について検討し、臨時的に行ってきた特例校措置を解消することが望ましい *当面学区の変更はしない |
業者テスト ア・テスト | 業者テストの結果を資料として用いた入学者の選抜が行われることがあってはならない | 学習検査の結果については、選抜資料としての扱いはせず |
推薦入学 | 専門学科のみではなく、普通科においても教育上の特色づくりと並行していっそう活用されるよう配慮すること | 特色ある学校・学科・専門コース等においても、推薦入学を実施できるようにすることが望ましい なお、普通科一般コースヘの推薦入学の導入については、今後の社会情勢の動向等も見極めながら、なお検討する必要がある |
調査書と学力検査の比重 | 各学校・学科等ごとに、あるいは定員の一部ごとに、学力検査の実施教科や教科ごとの配点を変えたり、調査書と学力検査の比重の置き方を変えたり、調査書の中の重視する部分を変えたりすることなどが考えられる | 両者の均衝がとれるようにすることが望ましい |
調査書 | 学習成績の記録以外の記録を充実し、活用するよう十分配慮すること。 その際、点数化が困難なスポーツ活動、文化活動、社会活動、ボランティア活動などについても適切に評価されるようにしていくことが望ましい |
現行の「特記事項欄」の趣旨を生かすとともに、中学校の学習指導要領改訂に対応した「観点別学習状況」の取り扱いなどについて検討する必要がある |
学力検査の傾斜配点 | 各学校・学科等ごとに、あるいは定員の一部ごとに、実施教科数を増減したり、教科によって配点の比重を変えたり、学校ごとに学力検査問題を一部作成して付加したり、教育委員会が多くの問題を作成し各学校がそこから選択して出題したり、生徒が教科を選択したりすることなどが考えられる | 特色ある学校・学科・専門コース等においては、その特色に応じて学力検査の実施教科数を弾力的に扱えるようにするとともに、特色に応じた特定の教科に対する傾斜配点などができようにすることが望ましい |
面接 | 積極的に活用することが望ましい | 特色ある学校・学科・専門コース等においては、必要に応じて実施できるようにすることが望ましい |
結局、高総検レポートや討議用資料に書かれた本部方針に基づいて作成した「重視する内容」に対して、当局の強い指導が入ったという現実があり、組合方針に対する信頼というところまで議論が交わされるほどであった。県当局と神高教執行部との間で、現場の意向を尊重するという確認がとれていたのにもかかわらず、多くの高校で書き直しを実施しなければならないような事態に陥り、新入試の問題を共有し、少なくともその問題点を克服するための運動が構築できなかったのは大変残念なことである。
県教委は、この提出された内容を検討した結果、三月末(96年)になって「受験生にその趣旨が伝わらないもの、総合的選考にあたって『C値』がそのまま使われるとよめるもの」があるとし、全校に再検討・再提出を求めました。また、この段階で、「特記事項」については全校で記載しないこととしました。神高教本部はこの調査に対して、「変更なし」との回答もよしとすることを確認し、対応することとしましたが、年度末という時間的問題もあり、職場に混乱を起こしました。(第56回定期大会議案書より)
について意見交換を行った。傾斜配点的な要素を多く含んだ「重視する内容」が多く存在することについて触れながら、傾斜配点は中学教育に悪影響を与えるものであり、「教育制度検討委員会」としては反対していることが確認された。
(1)推薦入試
(2)傾斜配点・入試教科の弾力化
(3)複数志願制(第一希望・第二希望)
組合 選抜と結びつく「特色」は教科活動に限るとしてよいか。(2)具体的な取り組み(案)の提示(当日の資料から引用)
当局 特色ある教科活動と選抜の結びつきは全ての高校で。選抜と結びつく特色が教科外活動のみはおかしい。
組合 数値のみを重視する表現はできない。
当局 その通り。
組合「調査書の評定」「学力検査の結果」のみ(両方またはどちらか一方)で選考することはできない。
当局 参考資料として使うのならできる。その際、数値以外の記載事項を必ず使う必要がある。
本部方針
- 基本的視点として「競争と排除の論理」を避ける。そのため「公表」する「選考にあたって重視する内容」は中学生の高校選択にあたって「低いハードル」となるよう設定する。
- 「数値のみによらない」ことが総合的選考のポイントであることに対しては、「学習状況」や「特記事項欄等の関連する記載事項」を付す。
- 傾斜配点的内容(特定教科の数値利用等)は、中学生の早期受験体制化に拍車をかけ、中学授業の形骸化につながるおそれがあるという観点から避ける。
- 選抜に結びつく「特色」が見いだせないときは「本校の教育目標、教育課程に照らし、“全教科における学習成果及び学習状況、特記事項等における関連する記載内容"」とする。
参 考 −高校入拭制度の変遷・概略−
高校多様化の進行
1961年 富山県第二次総合開発計画「3・7体制」
60年代の高校多様化
1962年 5年制工業高等専門学校
1963年 経済審議会答申 ハイタレント同一年齢層の3〜5%
1965年 中教審 「期待される人間像」
1975年 高等学校制度および教育内容に関する改革案−中間まとめ−
70年代の多様化(新多様化)
自由民主党 文教部会
1975年 都道府県教育長協議会 高校問題プロジェクトチーム
単位制高等学校 中高一貫6年制学校 集合型選択制高校
単位制職業科高校 全寮制高校
1949年4月 新制中学校・新制高等学校 望ましい運営の指針
「選抜をしなければならない場合も、これはそれ自体として望ましいことでなく、やむをえない害悪であって、経済が復興して新制高等学校で学びたい者に適当な施設を用意することができるようになれば、直ちになくすべきものであると考えなければならない。」
1951年9月11日文部省初中局長通達 第660号
「(高等学校入学者選抜方法を改善する方向は)志願者が特定の学校に集中しないようにすること、なるべく多数の志願者を入学させることのほかに、解決方法がないことが痛感された。当時既に学区制と総合考査制とが唱道され、若干の府県において実施されたという事実は、われわれに大きな示唆を投げかけるのである。」
「入学志願者が募集人員に満たない場合は、全員入学を許可する。」
「(学力検査を行う必要が生じた場合には)都道府県教育委員会および地方教育委員会の協力による各都道府県ごとに一斉に行う」
「実施方法および問題作成に関し、都道府県ごとに」設けられる「委員会の中学および高等学校の委員の数は両者同一とする。」
1956年 施行規則一部改正
「選抜のための学力検査」を行う。
「都道府県及び市町村の教育委員会は、相互に協力して、同一の時期及び問題により、学力検査を行うよう努めなければならない。」
1963年 8月23日 施行規則改正
「特別の事情のあるときは、これ(学力検査)を行わないことができる。」
同年 公立高等学校入学者選抜要項
「高等学校の目的に照らして、心身に異常があり修学に堪えないと認められる者その他高等学校の教育課程を履修できる見込みのない者をも入学させることは適当ではない。」
1984年7月20日 文部次官通知『学校教育法施行規則一部改正について』(要旨)
1987年 臨教審第三次答申 後期中等教育の多様化(関連部分引用)
- 公立高校の入試は、同一時期、同一問題で行う必要はない。
- 各高校・学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力適性等を判断して行う。
- 受験機会を複数にする。
- 調査書の重視、学習以外の記録の積極的利用。
- 普通科の推薦入学を積極的に行う。
- 面接の積極的利用。
- 特色ある高校の学科等については、可能な限り広い範囲から受験できるようにする。
1993年1月 高等学校教育の改革の推進に関する会議第3報告
- 学力検査・調査書・面接・論文(作文)等の利用の仕方、比重の置き方は各高等学校・学科の特色に応じて定めるようにする。
- 受験機会の複数化。
- 推薦入学を普通科も含めて推進する。
- 各学校の個性化・特色化を推進するとともにそれらを配慮した入学者選抜を行い、それぞれの学校の教育を受けるにふさわしい者を入学させる。
「高等学校入学者選抜の改善について」
1993年2月22日 文部省通史通知「高等学校の入学者選抜について」
- 公立学校の入学者選抜の改善について
- 多様な選抜方法の実施
- 多段階の入学者選抜の実施について
- 入学者選抜の資料について
- 学力検査の在り方について
- 調査書の在り方について
- 面接について
- 通学域について
A)教務部 B)カリキュラム検討委員会 C)入選委員会 D)「魅力・特色」プラン委員会 E)その他 [その他の内訳] (1)学校のあり方委員会 (2)コース制では推進委員会 (3)入選事務局 (4)入選検討委員会 (5)校務委員会or学校運営委員会 (6)入試選抜の特別委員会 (7)カリと入選の臨時合同委員会 |
5分会 10分会 33分会 30分会 13分会 1分会 1分会 1分会 2分会 2分会 5分会 1分会 |
|
8件 6件 3件 2件 2件 2件 3件 3件 |
(1)再提出を求められた (2)再提出を求められていない |
39分会 33分会 |
忙しいなか、また年度をまたがるかたちになってしまったために、現場には大変な迷惑をかけてしまったが、ほぼ七割の分会の協力を得ることができた。
回収総数 114分会 回収率68.7%
もし、県教委が繰り返し述べているように、今回の改変が「入れる学校から、希望する学校へ」という意図をもっていたとするならば、中学生の出願状況に、何らかの変化が生ずるはずである。その意味では、改変の意図は不発に終わったとみるべきであろう。
ア) 普通科における学区外からの志願者の変化
増 2校
減 5校
イ) 特例校における学区外からの志願者の変化 増、減 各1校
ウ)職業科における志願者の広域化 回答を寄せた11校中4校
エ)その他
今まで来なかった中学からの志願者増
全体的志願者増
評定値は低下
他校第二希望が多い
私学に流れた1校
1校
1校
1校
1校
「上位」「下位」という判断のしかたには、問題があるだろう。しかし、いわゆる「学校間格差」なるものが存在することは事実である。該当校よりやや下位の学校が、例外なくあがっている。これは、ほぼ予想どおりの結果である。ことさら学校間格差を確認するようなことをすべきではないという批判もあったが、この入選改変の結果、第一希望校と第二希望校の組み合わせとして、学校間格差が、より明確になる結果になったことだけは確かであろう。
すべての学校において、該当校よりやや下位と思われる学校名があがっている
現場の印象としては、志願変更は、予想よりも少なかったというところであった。それぞれの学校の「特色」が明確であり、出願後受検生が迷う余地もなかったから、志願変更が少なかったとはとても思えない。むしろ、合否可能性が読みにくかったために志願変更が抑えられた、と見る方が妥当ではないだろうか。この点は、後で実際の数値を見ながら検証することにする。
志願変更の減少
志願変更が中学間で偏りがあった
志願変更により、同一校志願者が増加
志願変更ABは無意味
同一校内部での普通科からコースへの変更
倍率が高い学校への志願変更がみられた8校 (例年より多かった、予想より多かったは0)
4校
5校
3校
1校
1校
新聞紙上では、第一希望の最終倍率1.45倍と報道されていた。しかし、この一見「高い倍率」も、第一希望募集枠が総定員の80%であることを考えるならば、1.25倍でやっと定員の100%になる。そのラインにも達していないということは、前年度までの基準でみれば、すでにこの段階で、52校が定員割れをおこしていたことになる。
回答校の中52校がこのラインに達していなかった。
とくに記入していない学校が多かった。ただ、最終的にC順位にもどった学校があるなど、C順位の問題を取り上げた学校が、何校かあることに注目したい。また、欠員が出ることをおそれ、「工夫した」答えてきた学校もあった。現場の苦悩をあらわしているとも言えよう。
最後にC順位にもどった(C重視)
基準とC順位の矛盾を感ずる
来年はC順位に近づけたい
基準が理解されているか疑問
ある程度成績を加味
基準があいまいで拡大された
特記重視になってしまった
基準どおりでは欠員が生ずるので、工夫した
客観的比較は困難
調査書の内容で判断できない1校
2校
1校
2校
1校
1校
1校
1校
1校
2校
「その他」ということで、様々な意見が記される結果になった。1校だけ、「学力のみによらない入試ができた」という、前向きとも見ることのできる評価をもった学校があった。しかし、ほとんどは、今回の入選の混乱、矛盾、不合理性、様々な問題を伝えるものであった。
C値で決まるとおもっている受検生がいる
私立中出身者の扱いに問題あり
過年度の扱いに問題あり
事務作業が難しい(取消の扱い、時間がかかる)
「足切り」に問題あり
調査書の記述内容に問題あり(担任により差があるのでは?)
選考で重視する内容が意図と違った
選考基準の見直し
選考で重視する内容と調査書の記述が合わない
総合的選考は無意味(問題あり)
「学習の記録」が使えなかった
合格者確保のため操作の噂
中学校側が本校の基準にあわせた
欠員が分かっていながら不合格者を出す矛盾
「輪切り」が明確化
学力のみによらない入試ができた
志願者が少なかったのは、本校の「特色」に問題があるのではない1校
1校
1校
3校
1校
1校
1校
3校
1校
1校
1校
1校
1校
1校
2校
1校
1校注:一部重複あり
まったく、第一希望の場合と同様である。ほぼ例外なく、第一希望校と第二希望校の組み合わせとして、学校間格差を確認する結果になってしまっている。
すべての学校において、該当校よりやや下位と思われる学校名があがっている
県東部を中心とするいくつかの学校以外は、第二希望の選考対象者の数は、一部を除外する必要もない数であった。第一希望、第二希望とも同一校を希望した受検生が、100%近い数値をしめした秦野伊勢原学区の学校からは、「『足切り』も何も、定員ちようどなのだから」という声が返ってきている。なお、実施した学校の「基準」は、「第一希望と同じ」「C点をつかい」となっている。
横浜北部
中部
南部
横・三
川崎
藤沢・鎌倉
県北
県央・平塚・県西・秦野伊勢原2校
1校
3校
3校
3校
1校
1校
なし
様々な問題点の指摘がある。おそらく、問題点は、とうてい書ききれない、というのが実感ではないだろうか。
同一校志願者がほとんど不合格(不利)
同一校志願者が多かった
C順位をつかった
他学区よりの受験者がめだった
第一希望より点数が高い
第一希望・第二希望の組み合わせが明確
意欲不足
そもそも定員に足りない
地元が多かった
上下の差が大きい
予想より多かった
第一希望から回ってくるはずが来なかった
「基準」どおりでは差がつかなかった
「総合的選考」の矛盾を感じた
3校
1校(工業)
1校(市立)
3校(すべて横浜市内)
6校
4校
1校(総合学科)
2校(県北)
1校(県北郡部)
1校
1校
1校
1校(工業)
1校
注)一部重複あり
もちろん、ここに上げられている問題点は、どちらかと言えば技術的な問題である。しかし、作業負担が大幅に増えたということは、だれもが認める事実であろう。この入選改変で、もしも学校間格差が多少とも縮小された、中学生の負担を軽減することになった、などの何らかの改善が、明らかに認められたならば、おそらく入選作業の重い負担も、多少はがまんのできるところだったかもしれない。だが、何ひとつとして改善を実感するニともできず、ただシステムの矛盾、不合理さを感じただけであった。だからこそ、作業上の負担が、より重く虚しいものとして問題視されることになったのではないだろうか。
マニュアルの問題を指摘
システムの問題を指摘
県教委よりの「指示」の不適切
時間的に余裕がない
トラブルの発生
海外帰国生徒の扱い
書ききれないほど問題が多い
作業負担の増加
セキュリテイーの問題
データを学校で利用できない
不安がある(制度全体)
コンピュータの台数不足
県教委(と組合の取組)に対する批判
3校
14校
5校
5校
6校
1校
9校
40校
1校
2校
1校
2校
1校
注)一部重複あり
「入れる学校から行きたい学校へ」という今回の改革を受けて、生徒たちが選択した結果だと思う。 (3月6日朝日新開)
|
これらの学校は、指導部長の言葉にしたがうならば、「魅力・特色づくり」に失敗した学校になってしまう。何しろ、「こどもたちが、希望する学校を選んだ」ところに、欠員が発生した理由がある、と言うのだから。だが、受験生が「自由」に「行きたい学校」を選ぶことのできるはずの、第一希望の段階で、これらの学校は本当に「敬遠」されていたのだろうか。もし、これらの「学校」に問題があるならば、欠員発生はごく一部の「失敗した」学校に限られた問題になる。だが、もし「学校」の問題ではなく、「制度」そのものが「失敗した」のであるならば、欠員発生は「全ての学校」にかかわった問題となるだろう。
松陽
横浜日野
川崎
新城
住吉
生田
大井
大和
大和西
座間
上鶴間
相武台
相模大野
弥栄東西
上溝
上溝南
橋本
相模田名
城山
欠員数
14
16
29
37
21
14
10
12
23
13
17
14
10
18
17
36
38
26
27
欠員率(対募集定員比)
5.0%
6.7%
10.4%
12.1%
7.6%
5.1%
3.1%
4.3%
8.3%
4.1%
6.1%
5.9%
3.6%
4.7%
7.1%
11.3%
10.6%
9.4%
7.5%
第一希望の募集枠が総定員の80%になってしまった以上、当然のことかもしれないが、出願段階の倍率が1.0を下回るような学校は、全県下に一校もなかった。たしかに、欠員の発生した学校の中には、学区の平均値からみて、かなり低倍率の学校もある。しかし、一部をのぞけば、学区平均からそう隔たった数値ではない。事実、これらの学校より低倍率をしめしていても、最終的には定員を充足することができた学校もある。第一希望枠の出願状況をみるかぎりでは、欠員の出た学校が、取り立てて「人気のない学校」だったとする根拠を見いだすことはできない。
松陽
横浜日野
川崎
新城
住吉
生田
大井
大和
大和西
座間
上鶴間
相武台
相模大野
弥栄東西
上溝
上溝南
橋本
相模田名
城山
志願者数
270
196
298
318
312
398
315
282
284
299
265
229
296
426
234
292
343
251
339
倍率
1.21倍
1.03倍
1.34倍
1.43倍
1.27倍
1.79倍
1.24倍
1.27倍
1.28倍
1.18倍
1.19倍
1.21倍
1.33倍
1.38倍
1.23倍
1.15倍
1.20倍
1.13倍
1.19倍
学区平均倍率
1.37倍
1.45倍
1.47倍
1.47倍
1.47倍
1.76倍
1.29倍
1.28倍
1.28倍
1.28倍
1.31倍
1.31倍
1.31倍
1.31倍
1.25倍
1.25倍
1.25倍
1.25倍
1.25倍
倍率差
-0.16
-0.42
-0.13
-0.04
-0.20
+0.03
-0.05
-0.01
±0.00
-0.10
-0.12
-0.10
+0.02
+0.07
-0.02
-0.10
-0.05
-0.12
-0.06
出願段階でみるならば、各校の第二希望の倍率は、第一希望の倍率と同じく、ほぼ各学区の平均値前後におさまっている。たしかに、高い倍率はしめしていない。しかし、第一希望の場合と同じく、これらの学校より低い倍率でも、最終的には欠員の発生しなかった学校も存在するのである。
松陽
横浜日野
川崎
新城
住吉
生田
大井
大和
大和西
座間
上鶴間
相武台
相模大野
弥栄東西
上溝
上溝南
橋本
相模田名
城山
定員
56
48
56
61
56
55
64
56
56
64
56
47
56
78
48
64
71
56
72
志願実数
240
241
288
283
263
286
323
243
261
279
294
231
276
373
221
290
284
293
364
志願倍率
4.29
5.02
5.14
4.64
4.70
5.20
5.05
4.34
4.66
4.36
5.25
4.91
4.93
4.78
4.60
4.53
4.00
5.23
5.06
学区
平均倍率
5.56
5.79
5.90
5.90
5.90
7.07
5.13
5.29
5.29
5.29
5.15
5.15
5.15
5.15
5.08
5.08
5.08
5.08
5.08
選考
対象者数
42
35
27
24
35
41
54
44
33
52
39
33
47
60
31
20
27
30
45
選考
対象倍率
0.75
0.74
0.48
0.39
0.65
0.75
0.84
0.79
0.59
0.81
0.70
0.70
0.84
0.77
0.65
0.31
0.38
0.54
0.63
選考
対象者率
17.5%
14.5%
9.4%
8.5%
13.3%
14.3%
16.7%
18.1%
12.6%
18.6%
13.3%
14.3%
17.0%
16.1%
14.0%
6.9%
9.5%
10.2%
12.4%
このように、相模原北部津久井学区は志願確定段階から、他の二つの学区は受検段階から定員が割れる状態になっていた。
大和座間綾瀬学区 第一希望最終競争率1.23倍 総募集定員
第一希望志願者数
学力検査受検者数
合格者総数
欠員数
2,334
2,391
(1.02倍)
2,304 (-30)
2,286
62
96年度募集定員
96年度志願者数
96年度学力検査受検者数
96年度合格者総数
96年度欠員数
2,453
2,708
(1.10倍)
2,597 (+44)
2,486
0
相模原南部学区 第一希望最終競争率 1.23倍 総募集定員
第一希望志願者数
学力検査受検者数
合格者総数
欠員数
1,695
1,773
(1.05倍)
1,665 (-30)
1,637
63
96年度募集定員
96年度志願者数
96年度学力検査受検者数
96年度合格者総数
96年度欠員数
1,693
1,797
(1.06倍)
1,689 (-4)
1,679
15
相模原北部津久井学区 第一希望最終競争率 1.17倍 総募集定員
第一希望志願者数
学力検査受検者数
合格者総数
欠員数
2,335
2,333
(1.00倍)
2,212 (-123)
2,196
147
96年度募集定員
96年度志願者数
96年度学力検査受検者数
96年度合格者総数
96年度欠員数
2,334
2,557
(1.10倍)
2,415 (+81)
2,339
10
この意見からは新入試制度に積極的に賛成するものは見当たらない。それまでの調査書、ア・テストで合否が見えた制度の中ではある程度合否の予測がついた。それがア・テストが選抜資料からはずされたこと、さらに約半分の44%の選考が「重視する内容に基づく総合的選考」となり、合否の予測がかなり困難となった。“15の春を泣かせない"ためにも中学校には都合の悪い制度である。
中学校側の主な意見
- 複数志願制について
- 第1希望が80%となり、新入試制度の“行きたい学校"の枠がかえって狭まるという矛盾を引き起こしている。見かけの倍率も当然ながら上昇し、受験生にとっては不安である。
- 第1、第2を同一校にするかどうかで悩んでいる。最終的には生徒の希望に任せざるを得ない。
- 推薦枠の拡大について
- 高校の推薦基準があいまいで、中学校でどのように選ぶか難しい。また公私立推薦合格者と進路未決定の受験生が混在する中での3学期の授業がますますやりにくくなった。
- 高校の推薦基準があいまいなので、合格可能性がよくわからない。本人の希望を尊重して志願させることになる。
- 受験機会が増えるのはいいことではないか。
- 入試に落ちるショックを何回も味わうことになりかねない。
- 「重視する内容」、総合的選考について
- 特別活動や校外活動ヘの参加動機が不純なものになることは、生徒の心の発達にとって問題である。
- 「重視する内容」に特定教科をあげることにより、その教科を不得意とする生徒を排除する結果になる。
- ボランティア活動など校外活動を本来の主旨と異なることに用いることは疑問である。また中学校側で責任もって把握できないことである。
- 部活動については職員の高齢化等のため軽減化する方向にある。「重視する内容」は部活動の実績ではなく、活動状況にすべきである。
- 塾のすすめ?で英語検定の受検者が増加した。
- 「重視する内容」が具体的にどのように選考基準として用いられるのかわからない。
- 調査書の記載事項について
- 地区校長会で書き方のマニュアルをつくった。
- 所見欄など中学校教員の作文コンテストにならないか心配である。
- 事実の記録が書ける子はいい。しかし実績のない子、目立たない子、おとなしい子は多く書けない。そういう子が救われる方法を考えて欲しい。
- 特記事項は学年会で決めているが、合否の影響がはっきりしない。
新聞記事等を参考にすると、この「後日お知らせします」の具体的内容は、普通科専門コースも、専門学科と同様に定員の30%まで推薦募集枠の限界を引き上げるということだったようである。(中には、「推薦入学について、専門コースすべてと専門科の募集人員を、定員の30%に引き上げることを決めた」と、推薦入学の募集枠が、一律に3O%引き上げられたかのような、誤った書き方をした新聞もあった。)
専門コース
専門学科
神奈川総合
大師┓
┃
┃
┛「募集枠については、後日お知らせします」
この内容は、「大綱」に記されたものを、そのまま引き継いだものとなっていた。「大綱」では、専門コースと専門学科の推薦入学募集枠は、「おおむね10%」、「30%以内」と定められており、その数値について、今後の見直しに含みを持たせるような説明等は、一切加えられてはいなかった。「大綱」の中の推薦入学に関する部分をあげておく。
専門コース
専門学科
神奈川総合
大師「募集定員のおおむね10%です」
「募集定員の30%以内で、各高校が決めます」
「後日に配付する『志願の手引き』で公表します」
「募集定員の30%以内で、高校が決めます」
そもそも、「大綱」は、神奈川の入選のあり方をしめす「責任ある文書」として発表されていたはずである。もしそうであれば、「大綱」に記された推薦入学の枠を定めた数値は、かんたんに動かせないもののはずである。推薦入学の募集枠が、「大綱」の本文に数値で明記されている以上、その数値を変更するためには、「大綱」そのものの部分改定という手続きがとられなければならないはずである。もちろん「大綱」そのものは、様々な問題を含んでおり、全面的に見直すべきものである。もし「大綱」全体にわたる見直しの方向が開けるなら、それはそれで望ましいことと言わなければらない。しかし、県教委の今回の手法は、「大綱」そのものを見直そうとするものではなく、むしろ「大綱」さえ無視して、その場その場の判断で都合よくつくりかえていこうとする手法である。この手法が罷り通るならば、「新神奈川方式」とよばれる入選制度全体が、――もちろんその制度自体が問題であるが――きわめて不安定な、その場限りの恣意的なものになってしまうだろう。
推薦に基づく選抜
(1)推薦入学の実施校
ア 普通科については,当該高等学校の特色に応じて実施することができるものとする。
(大綱の説明 普通科については,専門コースにおいて、平成8年度入学者の選抜から実施できることとします。なお,専門コース以外の普通科については、今後の課題とし,引き続き検討していくこととします)
イ 専門学科については,全ての学科において実施するものとする。
(2)推薦入学の募集人員
ア 普通科については,当該高等学校の入学定員のおおむね10%とする。
イ 専門学科については,当該高等学校の学科ごとの入学定員の30%以内とする。
その後、県教委は、「公立高等学校入学者選抜制度の改善案について(中間報告)」を発表した。その中では、次のように普通科一般コースにも推薦入学を拡大する方向が打ち出されていた。
推薦入学については、これまで農業、水産、工業、厚生等の学科で実施されてきたが、‥‥他の特色ある学校・学科・専門コース等においても、推薦入学を実施できるようにすることが望ましい。
なお普通科の一般コースへの推薦入学の導入については、今後の社会情勢の動向等も見極めながら、なお検討することが必要である。
この「中間報告」に対しては、諸方面から様々な批判が噴出し、県教委も一部を修正せざるをえなくなった。そして、「大綱」が発表され、「専門コース以外の普通科については,今後の課題とし,引き続き検討していくこととします」という表現になったのであった。推薦入学の範囲に限ってみるならば、「大綱」の段階で、県教委の姿勢は、一応「高課研」のレべルにもどったと見ることができるだろう。しかし、この間の動きを見るならば、推薦入学に関し、県教委がどこに向かおうとしているかは、明らかであろう。
推薦に基づく選抜
(1)推薦入学の実施校
○普通科一般コースについては,学校の特色に応じて実施できるものとする
○専門コースについては,その特色に応じて実施できるものとする
○専門学科については,すべての学科において実施する
(2)推薦入学の定員
○普通科一般コースについては,10%程度
○専門コースについては,10%程度
○専門学科については,30%以内
↓
(1)特に優れた成果をあげた教科の学習成績(1項目のみ)
(1)特に優れた成果をあげた教科の学習の記録
(2)学力検査の中で特に優れた成果をあげた教科
(3)特別活動等に対する取り組み状況および学習の状況
↓
(1)行動の記録、特技・特徴
(2)部活動の活動状況と生徒会・委員会活動への参加状況
(1)行動の記録、特技および部活動(活動状況・実績)生徒会活動(参加状況)
(2)学力検査の国語、数学、英語の3教科の結果
↓
(1)中学校における生徒会・委員会など特別活動、その他生活全般においてとくに秀でた事柄
(2)中学における学習活動において、特にすぐれた成果をあげた教科の学習成績および学習状況
(1)学級・生徒会・各種委員会活動などの実績および部活動の優れた業績
(2)基本的生活習慣および中学時代に伸ばした特技・特徴
(3)学習の記録において、特に優れた成果をあげた教科
(4)学習検査において、優れた成果をあげた3教科
↓
次の(1)〜(2)のいずれかの内容
(1)各教科全般ヘの積極的な取組み状況
(2)学校行事、生徒会活動、部活動などの教科外活動への積極的な取組み状況
次の(1)〜(2)のいずれかの内容 を削除、(1)(2)はそのまま
外国語を母語とし、日本語による学習にハンデを持ちながらも努力し、勉学意欲を持っていること
↓
学カ検査においては、他の教科と比べ優れた成果をあげた教科
学力検査で優れた成果をあげた3教科
↓
調査書の学習の記録における得意教科(1〜3教科)の学習成果および学習状況
学力検査の国語、数学、英語、3教科の成績
上の表では、第1希望枠に対する第1希望志願者の倍率ではなく、第1希望者総数と第2希望者総数それぞれの募集定員に対する比率を求めてみた。このデータは普通科専門コースと専門学科については複数の学校の数値の総和であり、個々の学校や学科においては逆転している場合もあるが、全体の傾向を見渡すためには一定の有効性を持っているものと思われる。
同一校希望率 第1希望志願者/募集定員 第2希望志願者/募集定員 全体 0.779 1.158 1.158 普通科 0.777 1.147 1.154 普通科専門コース 0.757 1.039 0.935 専門学科 0.802 1.203 1.183 単位制普通科 0.652 3.728 2.536 単位制総合学科 0.887 1.315 1.506
秋山崇 | (長後) |
金澤信之 | (柿生) |
川津正巳 | (柿生) |
小山晴美 | (相模原工技) |
中野渡強志 | (相模台工業・定) |
本間正吾 | (田奈) |
三浦真澄 | (中沢) |
溝口一郎 | (大船・現鎌倉養護) |
山崎譲 | (足柄) |
和智匡雄 | (川崎・定) |