神奈川の高校教育改革をめざして 第IX期高総検報告

新入選制度はなにをもたらしたのか

〜「新神奈川方式」を検証する〜

1997.12.12

神奈川県高等学校教職員組合
第IX期高校教育問題総合検討委員会





目次



  1. 「新神奈川方式」批判
  2. 「高課研」から「新神奈川方式」まで
    1. 「新神奈川方式」はどのような経過でつくられたか
    2. 神高教と県教委の交渉経過と現場の対応
    3. 「総合的選考で重視する内容」にかかわる実態調査
  3. 「新神奈川方式」の現実
    1. アンケートにみる現場の実態
    2. 欠員発生について
    3. 中学校側の戸惑い
  4. 97年度入試の実態
    1. 97・98年度「募集案内」の比較
    2. 97年度入選データの整理と分析
[資料]入選データ (略)





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1.「新神奈川方式」批判




(1)現実離れしたスケジュールのもとで

 1997年春、「新神奈川方式」と称する、新しい入学者選抜制度が、ついに実施にうつされた。だが、この新方式は、これまで神奈川県の高校がかかえていた問題を、何ひとつ解決するものではなかった。それどころか、問題を深刻にしただけだった。高校現場には、いままで以上に重い負担がかかり、中学校は戸惑い、混乱したことは、否定しようもない事実だ。そして、肝心の受検生の間には、不安が広がり、多くの受検生が、公立高校から離れていった。これが高校現場の大方の実感ではないだろうか。
 そもそも「新神奈川方式」とは、何だったのか。「神奈川県公立高等学校入学者選抜制度改正大綱」の前文で、この新しい方式は、「生徒一人ひとりの個性や能力,適性を多面的にとらえ,調査書の評定や学力検査などのいわゆる数値のみではなく,生徒の特性や長所に注目した選抜制度であること」、「生徒一人ひとりが,自らの進路希望に基づいて学校選択ができるような選抜制度であること」を目指したものだと説明されている(高総検報告[ 第2分冊所収)。この言葉に、魅力を感じ、期待をもった受検生、保護者も多かったことだろラ。そして、この改変の方向は、埼玉県からはじまった、いわゆる「偏差値たたき」の全国的方向とも一致していた。さらに、この全国的動きは、「学力」にかわる「生きる力」の重視へと向かおうとする中央の動きからはじまっている。その意味では、神奈川の入選改変は、中央の動き、全国の動向にも一致し、さらに世論にも一応受け入れられる素地を持つという、それなりに十分ともいえる大義名分をそなえたものだった。
 この「新神奈川方式」の二本の柱が、いわゆる「総合的選考」と『複数志願制」であった。新制度の内容を定めた「神奈川県公立高等学校入学者選抜制度改正大綱」によれば、募集定員全体の44%(第一希望[80%枠の30%]+第二希望[20%])が、「調査書の評定,学力検査の結果及び調査書の評定以外の記載事項を活用して総合的に選考する」部分とされていた。これにより、「学力」重視を打破し、「個々の生徒の特徴」を見た選抜方式が、実現されるはずであった。また同時に、「複数志願制」をとることにより、「生徒の興味・関心,進路希望等の多様なニーズに応じ、一人ひとりの個性と希望を生かせる学校選択」も、可能になるはずであった。しかし、この二つの柱を立てたことが、「新神奈川方式」そのものを、非現実的で不合理なものとしてしまう結果にもなったのである。
 そもそも「総合的選考」が成り立つためには、各学校の「特色づくり」が、進展しているという前提がなければならない。それぞれの学校が、「総合的選考で重視する内容」を明らかにし、それに基づいて選考をする以上、各学校は選考において生かすことのできる「特色」を、すでにもっていなければならない。だから、「新神奈川方式」という新しい入選制度を実施するためには、各高校の「特色づくり」を急いで進めなければならなかった。「大綱」にも「高等学校の特色づくりについて」という別紙資料が添付され、「総合的選考」と「特色」の関係を確認し、さらに、こんな現実離れしたスケジュールを記載していた。

○教科活動等において明確な特色をもつ学校では・・・
  平成6年度・・・・「魅力プラン」の作成
  平成7年度以降・・・これまでの特色づくりの継続
○現在もっている個性や特色を顕在化させ,特色づくりを行う学校では・・・
  平成6年度・・・・・「魅力プラン」の作成
  平成7年度・・・・・特色づくりのための具体的方法検討
  平成8年度以降・・・特色づくりの計画的実施
 この計画によれば、「新神奈川方式」が実施に移されるはずの97年度には、「特色づくり」は「計画的に実施」されている段階にまで、進んでいるはずであった。そうでなければ、入選改変そのものが、宙に浮いてしまうだろう。こうして、各高校現場は、無理難題とも言えるこの課題に答えるため、「魅力プラン」を短期間で作成し、締切りに間に合わせて提出することになった。表向きは、すべてがスケジュールどおりに進んでいるように見えたかもしれない。しかし、こんな唐突で、無理な計画が、破綻することは、多少とも現実を知っているものであれば、十分に予想することができたはずである。(「高課研」報告から「新方式」作成までの経緯等については、本報告の2-(1)にまとめてある。また、さらに詳しく知りたい場合は、「新神奈川方式へのシナリオ」ねざす19号別冊 教育研究所発行が参考になる。)

(2)実施以前に挫折していた「新神奈川方式」

 散々苦労したあげく、「魅力プラン」として、各学校がしめしたものの大部分は、「多様な選択科目の設定」「基礎学力の充実」「部活動の活性化」など、大きな差のないものであった。「魅力プラン」を打ち上げ、各学校の「特色」を明確にしようとした県教委にとっては、残念な結果だったかもしれない。
 だが、地域の中学生たちの高校進学への期待に応えるために設置されたという、公立高校本来の出発点にもどってみるならば、どうだろう。もともと、公立高校は、「特色」を楯にとって、特定の「個性」をもった生徒だけを受け入れるためにつくられた学校ではなかった。地域の多様な生徒を受入れ、後期中等教育を保障することが、公立高校の存在理由だった。こう考えるならば、「魅力プラン」を作成しても、その内容に「特色」といえるほどの大きな差がつかなかったことは、当たり前と言えば当たり前の結果だったのではないだろうか。また、「魅力プラン」に対し、期待できる財政的支援が、細々としたものであり、施設上も、人員上も、十分な保障が得らる見通しがない状況のもとでは、各高校現場の選択は、いたって現実的なものだったとも言える。いずれにせよ、各現場がしめした「魅力プラン」の大部分は、公立高校として、それなりに妥当で現実的な内容だったと言ってよいのではないだろうか。しかし、大部分の高校の「特色」が、先にあげた程度のものにとどまったということは、その「特色」から「総合的選考で重視する内容」を導き出そうなどということは、とうてい不可能だということをも意味している。
 「特色ある学校」をつくり、それぞれの学校の「特色」に合わせた「総合的選考」をおこなおうとする、「新神奈川方式」は、このように「魅力プラン」とりまとめの段階で、すでに挫折していた。もし、責任ある姿勢で入選改革を考えているならば、この段階で、計画を延期するか、さもなくば「方式」を改めるしかなかったであろう。しかし、それぞれの学校の明確な「特色」が出そろったはず、という「架空の前提」のもとで、今度は「総合的選考で重視する内容」の提出を、県教委は各高校現場に求めてきた。
 不思議なことに、この「重視する内容」の提出後、各高校が「魅力プラン」で提出した「特色」との整合性を、行政の側が問題にしたようなケースは、ほとんど聞くことがなかった。この段階になると、すでに「魅力プラン」は、ほとんど話題にのぼることはなくなってきていた。そのかわりに、4教科ならいいが、5教科はだめ、他校と同じではだめ、といった「形式」あるいは「印象」が、行政サイドからの指摘の中心になってきた。
 こうしてできあがった「募集案内」は、表面を見るかぎりでは、「多様な選抜方法」が並んでいるかのような「印象」を与えている。しかし、実際には「学習の成果」「学習状況」「学力検査」「特別活動の記録」等の用語が、様々なバリエーションで並んでいるだけであり、その具体的内容のどこが違うのか、そして各学校の「特色」と称するものと、どういう整合性があるのか、読むものが首を傾げなければならないような結果になっている。だが、先に述べた公立高校の役割を考え、また内容に大きな差のない「特色」づくりになっていたことを考え合わせるならば、これは当然の結果とも言える。現実離れした「新神奈川方式」を、体裁だけ整えようとする姿勢にこそ、無理があったのである。(この間の行政と現場の関係については、本報告の2-(2)、また現場の状況については、2-(3)にまとめてある。)

(3)強行された「新神奈川方式」

 これらの問題は、けっして予想のつかないものではなかった。「新神奈川方式」が輪郭をあらわした、「公立高等学校入学者選抜制度の改善案(中間報告)(94年5月19日発表)」の段階から、各種資料(職場討議用資料94-9、高総検レポートNo.16, No17)において、繰り返し入選改変の向かう危険な方向と問題点を指摘してきた。そして、「中間報告」を修正するかたちでつくられた「神奈川県公立高等学校入学者選抜制度改正大綱」についても、同じように問題点を指摘してきた(職場討議用資料94-15高総検レポートNo.18,No.19,No.20)。(ここに上げた文書は、高総検報告VIII第3分冊所収)
 こうした批判、さらに高校現場の疑問、中学校、受検生の戸惑いを無視しながら、「新神奈川方式」は、予定どおり強行された。しかも、実施段階になったところで、さらに作業上の様々な問題も持ち上がってきた。「複数志願制」という複雑なしくみを、眼られた時間内で運用するための、コンピュータシステムの導入である。このシステムは、試行さえ満足に行われず、その安全性についての疑問も解消されないまま、締切りに間に合わせるかのように強行されたのであった。そして、人的保障も、時間的保障も、十分に与えられないまま、いままで経験したこともない作業を、現場は強いられることになったのである。{高校現場に対するアンケート調査の結果は、本報告の3-(1)にまとめてある。また、中学校等の戸惑いの様子については、3-(3)にまとめてある。)
 さて、こうまで無理をして実施された「新神奈川方式」は、いったい何をもたらしたのだろうか。まだ、顕在化していない問題も多いだろう。ただし、史上二番目の欠員数を出してしまったという事態{最多記録は、82年入試。百校計画推進中という特殊な状況の下でおこったことを考えると、97年が事実上の最多記録とも言えるだろう。)だけは、数値上も明確なかたちであらわれた。もっとも、欠員発生そのものに問題があると、ここで言おうとしているわけではない。もし、公立高校の募集定員が、公立高校進学希望者の数を上回っているならば、そこで発生する欠員は、ことさら問題とする必要のないものだとも言える。しかし、現在の神奈川に、その条件はない。公立高校欠員発生の原因は、あきらかに多くの受検生が私学に流れたところにある。事実、県内の私学の倍率は、昨年の2.91倍から4.02倍にはね上がっている。多くの受検生に不安を与え、その結果、受検生が私学受検に走らざるをえなくなるような入試制度には、それだけで、すでに失敗という評価を与えざるをえない。(欠員発生の問題については、本報告の3-(2)にまとめてある。また入選に関する数値の整理は、4-(2)にまとめてある。)

(4)「新神奈川方式」の行方

 このように初年度で、すでに失敗という評価を与えざるをえない「新神奈川方式」が、今後長く続いた場合、さらに何がおこるのだろう。すでに指摘したように「新神奈川方式」の基本的しくみは、「特色ある学校」をつくり、その学校の「特色にあった生徒」を、多様な資料をつかって選抜していこうとするものであった。この基本的しくみは、たとえ装いを新たにしているとしても、繰替えし現れ、繰り返し批判されてきた「適格者主義」にほかならない。
 たしかに、この新たな装いの「適格者主義」には、高校一般への「適格者」を選抜しようとするものではない。イメージは変わっている。しかし、それぞれの高校が、それぞれの高校に「適格」な生徒―それぞれの「特色」にあった「個性」をそなえた生徒―を選抜しようとする姿勢を基本に据えようとする以上、それは「適格者主義」の変種であるにすぎない。もし、「新神奈川方式」が、根を下ろし、実質を獲得したとき、そこでおこなわれる作業は、それぞれの「特色」を持ち、その「特色」にあった生徒を選び、合わない生徒を排除していくという作業になるだろう(高総検レポートNo.19参照)。
 さらに、神奈川の高校が抱えるもっとも重大な問題であり、その解決、是正が待たれる「学校間格差」についても、「新神奈川方式」は暗い陰をおとしつつある。「特色ある学校」がつくられていくとき、学校間の「序列」は、「特色」の名のもとに、より固定されたものとなっていく。「新神奈川方式」が長く続くならば、「学校間格差」は、縮小、是正の方向に向かうどころか、より鮮明な、より強化された姿をあらわしてくるだろう。この恐れはけっして根拠のないものではない。すでに今年度の入試でも、第一希望校と第二希望校の組み合わせとして、学校聞の「序列」はより精緻な姿をあらわしてきているのである。(本報告の3-(1)を参照)

(5)いま可能なこと

 「新神奈川方式」には、何も期待できない。「新神奈川方式」は廃止、あるいは全面的見直ししかない。しかし、当面は「新神奈川方式」のもとで、少しでも「まともな」入試を追求する道しかないだろう。「低いハードル」という言葉で提起(95年第14回分代提起本部方針)されたように、受検前に特定の生徒を排除することのない基準、あるいはより合理的で公平な基準をつくることは、現場の努力により、ある程度までは可能である。さらに、これ以上「新神奈川方式」を悪いものにしないために、推薦入学の普通科全体への拡大、あるいは隣接学区枠の設定等の学区拡大など、「改悪」の方向を阻止していくことも必要だろう。事実、すでに推薦入学募集枠の拡大という方向で、「新神奈川方式」の一部が変更されている(推薦入学枠の拡大については、本報告の4-(1)を参照)。「新神奈川方式」は、けっして完成されたものではない。「新神奈川方式」は、受検生にも、現場にも、より大きな負担を強いる、より複雑なシステムへと向かう、最初の段階に過ぎないのである。

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2.「高課研」から「新神奈川方式」まで




(1)「新神奈川方式」はどのような経過でつくられたか

1). 高課研の発足
 1991年11月21日、後中教の協議に基づいて、高等学校教育の課題に関して総合的に協議を行うため発足した。24名の学識経験者、教育行政関係者、学校教育関係者で組織され神高教からも組織代表が参加した。高課研発足の時期は中学校・中学生とその保護者を中心とする県民から、ア・テスト体制への不満や高校進学率の拡大の要求が高まっていた時期であった。

2). 高課研の検討項目
 これまでの諮問機関の流れの中で、特に高問協、後中検の報告を踏まえて調査研究にあたるとしながらも、「学区」については、「18学区の定着が図られている段階であり、本協議会の検討項目とすることは適当でないが‥‥必要に応じて論議することとした」と、検討からはずされた。
 結局、検討項目は主に次の2つに整理された。

ア.高等学校(全日制)への進学機会について
  1. 高等学校の進学機会の現状と問題点
  2. 国民的教育機関としての高等学校教育の在り方について
  3. 今後の進学機会の在り方の基本的視点について
  4. 計画進学率の見直しとこれに関連する諸課題について
イ.公立高等学校入学者選抜制度I=ついて
  1. 公立高等学校入学者選抜制度の現状と問題点について
  2. 国民的教育機関としての高等学校教育の在り方について
  3. 今後の選抜方法の在り方の基本的視点について
  4. 選抜方法の役割こついて
3). 高課研審議中の中央の動き
 高課研の発足と同じ年の91年4月に、「第14期中央教育審議会(中教審)」答申があり、それを受けた文部省は「高校改革推進会議」を設置し、4次にわたる報告を出させて、「特色ある高校づくりと高校入試の多様化」を推進していった。そして、93年2月に、「高校入試の多様化」を趣旨とする「文部省事務次官通知」を全都道府県市教委に行い、同年12月には、「多様化」の進んでいない教委の尻をたたくために、「高校入試の多様化」の実施状況についての文部省による全国調査の結果を発表している。これらはいずれも高課研の審議中であり、さらに92年10月には、埼玉県教育長による業者テスト批判が全国的話題となり、当時の文部大臣が神奈川のア・テストを批判するといったようなこともあった。

4). 文部省通知(93・2・22)と高課研報告
 このような中央の動きに高課研報告は大きく影響されたと思われる。高課研報告と文部省通知とを比較するとそのことが明らかである。(p8,資料3参照)

5). 中間報告は高課研報告を無視
 「第2次報告」をうけた県教育委員会はi94年1月、内部に「公立高校入学者選抜制度検討会」を設置し、実施計画の策定に向けて検討を始めた。そして、同年5月19目、その中間報告「公立高等学校入学者選抜制度の改善案」を発表した。
 この中間報告は高課研報告を大きく逸脱している内容があった。たとえば、「第2次報告」では「今後の社会情勢の動向等も見極めながら、なお検討することが必要である」となっている「普通科への推薦入学への導入」が、「学校の特色に応じて実施できるものとする」となっていた。また、「第2次報告」では「考慮する必要がある」となっている「隣接学区の扱い」が、「学区外志願限度の枠の中に‥‥新たに設ける」となっていた。あるいは、「第2次報告」では「積極的に検討する必要がある」となっている「受験機会の複数化」などが、「第2志望校を志願できるものとする」になっていた。

6).改正大綱と教育長通知
 「中間報告」の2ヶ月後の93年7月18日、「神奈川県公立高等学校入学者選抜制度改正大綱」が発表された。
 「中間報告」段階でとくに問題となった、普通科への推薦入学制、普通科の学力試験への傾斜配点制、全日制全課程ヘの複数志願制の導入の三点のうち、「大綱」では、「複数志願」を除く二制度の導入は削除されていた。「複数志願制」は、「ア・テスト排除」とともに、「新神奈川方式」入試制度を支える大きな柱となった。
 それから更に2ケ月余り後の9月26目付で、県教委は、「魅力と特色ある高校づくりの推進について」と題する教育長通知を出した。これが、本年(1997年)3月に実施された入試において各高校の「選考に当たって重視する内容」へとつながっていった。それは普通科の募集定員の44%、「特色ある高校・学科専門コース」の募集定員の100%の生徒が対象になった。


資料1 研究協議会・運営委員会日程
区分 研究協議会 運営委員会
91年
 11月
 12月
92年
  1月
  2月
  3月
  4月
  5月
  6月
  7月
  8月
  9月
 10月
 11月
 12月
93年
  1月
  2月
  3月
  4月
  5月
  6月
  7月
  8月
  9月
 10月
 11月
 12月

21日第1回





17日第2回





8日第3回
7,11日フォーラム開催




30日第4回



27日第5回



10日第6回
25日第7回


26日第1回

27日第2回

16日第3回

30日第4回

18日第5回

8日第6回


22日第7回



30日第8回
23日第9回
24日第10回

16日第11回

3日第12回25日臨時
15日第13回
29日第14回
18日第15回


91年4/19 「第14期中教審報告」








6/29 「高等学校の改革の推進に関する会議」 (第1次報告)

8/28 「高等学校の改革の推進に関する会議」 (第2次報告)



12/8 鳩山文相 ア・テスト批判
12/18 県教委 ア・テスト実施を明らかかにする
1/26 「高等学校の改革の推進に関する会議」 (第3次報告)
2/12 「高等学校の改革の推進に関する会議」 (第4次報告)
2/22 「文部省事務次官通知」








12/16 「高校入試の多様化」 について文部省全国調査発表


資料2  「高課研」答申後の県教委の動き
94年




1/12公立高校入学者選抜制度検討会議を発足(委員長は教育長)
5/19高校入試改革改善案(中間報告)を発表
      学区外志願8%の拡大 普通科推薦制の導入
7/18入学者選抜制度改正大綱を策定
9/26「魅力と特色ある高校づくりの推進について」の教育長通知を出す


資料3 文部省通知と高課研報告
項目 文部省通知 高課研報告
多様な選抜方法  各高等学校・学科・コースごとの特色に応じて多様であることが望ましい  特色ある学校・学科・専門コース等においては、その特色にふさわしい多様で弾力的な選抜方法を考える
受験機会の複数化  多段階にわたり入学者選抜が実施されるよう十分配慮すること  再度の機会を与え、受験機会の複数化や、受験生の希望により第2希望校を認めるといった志願のあり万、あるいは再募集のあり方などについて積極的に検討する必要がある
学区  各高等学校に特色を持たせ、生徒の特性に応じた学校選択が可能になるような方向で検討する必要がある *隣接学区の扱いについても考慮する必要がある
*学区外志願の枠の扱い等について検討し、臨時的に行ってきた特例校措置を解消することが望ましい
*当面学区の変更はしない
業者テスト  ア・テスト  業者テストの結果を資料として用いた入学者の選抜が行われることがあってはならない  学習検査の結果については、選抜資料としての扱いはせず
推薦入学  専門学科のみではなく、普通科においても教育上の特色づくりと並行していっそう活用されるよう配慮すること  特色ある学校・学科・専門コース等においても、推薦入学を実施できるようにすることが望ましい
 なお、普通科一般コースヘの推薦入学の導入については、今後の社会情勢の動向等も見極めながら、なお検討する必要がある
調査書と学力検査の比重  各学校・学科等ごとに、あるいは定員の一部ごとに、学力検査の実施教科や教科ごとの配点を変えたり、調査書と学力検査の比重の置き方を変えたり、調査書の中の重視する部分を変えたりすることなどが考えられる  両者の均衝がとれるようにすることが望ましい
調査書  学習成績の記録以外の記録を充実し、活用するよう十分配慮すること。
 その際、点数化が困難なスポーツ活動、文化活動、社会活動、ボランティア活動などについても適切に評価されるようにしていくことが望ましい
 現行の「特記事項欄」の趣旨を生かすとともに、中学校の学習指導要領改訂に対応した「観点別学習状況」の取り扱いなどについて検討する必要がある
学力検査の傾斜配点  各学校・学科等ごとに、あるいは定員の一部ごとに、実施教科数を増減したり、教科によって配点の比重を変えたり、学校ごとに学力検査問題を一部作成して付加したり、教育委員会が多くの問題を作成し各学校がそこから選択して出題したり、生徒が教科を選択したりすることなどが考えられる  特色ある学校・学科・専門コース等においては、その特色に応じて学力検査の実施教科数を弾力的に扱えるようにするとともに、特色に応じた特定の教科に対する傾斜配点などができようにすることが望ましい
面接  積極的に活用することが望ましい  特色ある学校・学科・専門コース等においては、必要に応じて実施できるようにすることが望ましい


(2)神高教と県教委の交渉経過と現場の対応

1).96年3月の混乱
 96年7月、各高等学校が作成した「総合的選考で重視する内容」が、「募集案内」という形式で県民に公開された。
 しかし、昨年度(96年度)の定期大会の議案書にも書かれているように、3月から5月にかけて「選考で重視する内容」について、県当局と各校とのやりとりの中でかなりの混乱を生じた。それは3月までの間に神高教と当局とで確認してきたことと齟齬をきたしている部分がかなり見受けられるものであった。特に、C値の扱いについては問題を残したと言える。
 また、現場と当局が個別に話し合う状況が生まれ、混乱に拍車をかけた。

県教委は、この提出された内容を検討した結果、三月末(96年)になって「受験生にその趣旨が伝わらないもの、総合的選考にあたって『C値』がそのまま使われるとよめるもの」があるとし、全校に再検討・再提出を求めました。また、この段階で、「特記事項」については全校で記載しないこととしました。神高教本部はこの調査に対して、「変更なし」との回答もよしとすることを確認し、対応することとしましたが、年度末という時間的問題もあり、職場に混乱を起こしました。(第56回定期大会議案書より)
 結局、高総検レポートや討議用資料に書かれた本部方針に基づいて作成した「重視する内容」に対して、当局の強い指導が入ったという現実があり、組合方針に対する信頼というところまで議論が交わされるほどであった。県当局と神高教執行部との間で、現場の意向を尊重するという確認がとれていたのにもかかわらず、多くの高校で書き直しを実施しなければならないような事態に陥り、新入試の問題を共有し、少なくともその問題点を克服するための運動が構築できなかったのは大変残念なことである。

2).95年末、中学現場との意見交換
 高総検は、これまでも教育課題について意見交換をしてきた神教組の「教育制度検討委員会」と新入試について話し合いを持った。(「教育制度検討委員会」は神教組に設置された教育課題について検討し、報告を行う組織である。)中学側が新入試についてどのような考え方を持っているかを確認し、共に運動を起こす第一歩とするためのものであった。95年10月6日に行われた会議では、

 (1)推薦入試
 (2)傾斜配点・入試教科の弾力化
 (3)複数志願制(第一希望・第二希望)
について意見交換を行った。傾斜配点的な要素を多く含んだ「重視する内容」が多く存在することについて触れながら、傾斜配点は中学教育に悪影響を与えるものであり、「教育制度検討委員会」としては反対していることが確認された。
 専門コースを除いて、普通科には傾斜配点は導入されなかったが、「重視する内容」にはまさにそのもと言えるものが出てきている。傾斜配点や入試教科の弾力化は中学教育において教科に「軽重」をつけるという点で非常に問題である。まさに、入試の配点で教科の値踏み行われると言っても過言ではない。
 その後、神高教執行部も傾斜配点については反対していくという方針を策定し、現在に至っている。各現場においては今後も中学教育を視野に入れて冷静な対応をすべきところである。
 推薦入試ならびに複数志願制についても、これは中学教育を踏みにじり、子ども達の心を切り裂くものであるとして、その問題の大きさについて同じ認識に立つことができた。

3).95年11月 神高教・入選対策会議の実施
 95年11月21日に専門学科・専門コース・神奈川総合・総合学科を対象とした対策会議が、11月29目には全日制普通科を対象とした対策会議が実施された。ほぼ同様の資料を使用して会議は行われ、質疑応答・情報交換が行われた。その席上で、執行部は資料として(1)当局との協議内容と(2)具体的な取り組みについての案を提示した。

(1)県当局との協議内容(当日の資料から引用)
組合 選抜と結びつく「特色」は教科活動に限るとしてよいか。
当局 特色ある教科活動と選抜の結びつきは全ての高校で。選抜と結びつく特色が教科外活動のみはおかしい。
組合 数値のみを重視する表現はできない。
当局 その通り。
組合「調査書の評定」「学力検査の結果」のみ(両方またはどちらか一方)で選考することはできない。
当局 参考資料として使うのならできる。その際、数値以外の記載事項を必ず使う必要がある。
(2)具体的な取り組み(案)の提示(当日の資料から引用)

4).95年12月 分代での討議、本部方針提起
 執行部は95年12月8日の第14回分代で「総合的選考で重視する内容」についての本部方針を提起し、認められた。
本部方針
  • 基本的視点として「競争と排除の論理」を避ける。そのため「公表」する「選考にあたって重視する内容」は中学生の高校選択にあたって「低いハードル」となるよう設定する。
  • 「数値のみによらない」ことが総合的選考のポイントであることに対しては、「学習状況」や「特記事項欄等の関連する記載事項」を付す。
  • 傾斜配点的内容(特定教科の数値利用等)は、中学生の早期受験体制化に拍車をかけ、中学授業の形骸化につながるおそれがあるという観点から避ける。
  • 選抜に結びつく「特色」が見いだせないときは「本校の教育目標、教育課程に照らし、“全教科における学習成果及び学習状況、特記事項等における関連する記載内容"」とする。

 執行部は「総合的選考で重視する内容」について2月2日付けでアンケートを実施した。そのアンケートをもとに第17回分代で執行部は問題点の指摘を行い、各現場に検討の要請を行った。

問題点の指摘(分代資料より引用)
 しかし、各現場から出された「重視する内容」には本部が問題を指摘したものが多く残ったのも事実であり、その後、中学側からこの問題点を指摘されることになった。

5).96年2月 C値についての再確認
 さらに、2月23日に実施された分代において「選考にあたって重視する内容」を策定する際、一部校長がC(学習検査)を使用できないと発言していることについて執行部から当局と再確認したことの連絡があった。

「選考にあたって重視する内容」に関して(連絡)当日の資料より引用

組合……これまでの整理では「総合的選考をCのみで行うことはできない」ことは確認してきたが、「選考にあたって重視する内容」をどのように使うかについては各校の基準でよいとしてきたのではないか。(例えば「重視する内容」を20点とし、Cを80点として合計して選考する。「重視する内容」で選考した結果、欠員が出そうなのであらためてCを用いて定員まで選抜した等)
当局 指摘の通り。総合的選考にあたってはCのみで行うことはできないとしたものであり、例えば「重視する内容」を20点とし、Cを80点として合計した値(仮にD)を使うのは可能。

6).3月4日以後
 各高校は「選考にあたって重視する内容」を3月4日に各県当局に提出した。しかし、県当局は大綱に合致しないものがあるとの判断から全ての高校に3月25日締切で再検討を求めた。結局、各現場は他校が県当局から何を言われているのかを知ることができず、神高教執行部の方針との関係を整理できないまま、混乱した状況で再検討をせざるを得なかった。
 さらに、再検討後に提出されたものについても、新入試に合致しないと判断された高校については、県当局は強い検討の要請を行った。5月初旬になっても電話連絡で検討が要請され、混乱を生じた。検討要請は文言上のものから内容そのものに及ぶものまで様々であったようだが、どのような「選考にあたって重視する内容」が再々検討になったのかを県当局は最後まで明らかにしようとしなかった。



参 考
 −高校入拭制度の変遷・概略−

  高校多様化の進行

60年代の高校多様化
1961年 富山県第二次総合開発計画「3・7体制」
1962年 5年制工業高等専門学校
1963年 経済審議会答申 ハイタレント同一年齢層の3〜5%
1965年 中教審 「期待される人間像」

70年代の多様化(新多様化)
1975年 高等学校制度および教育内容に関する改革案−中間まとめ−
      自由民主党 文教部会
1975年 都道府県教育長協議会 高校問題プロジェクトチーム
      単位制高等学校 中高一貫6年制学校 集合型選択制高校
      単位制職業科高校 全寮制高校


1949年4月 新制中学校・新制高等学校 望ましい運営の指針
 「選抜をしなければならない場合も、これはそれ自体として望ましいことでなく、やむをえない害悪であって、経済が復興して新制高等学校で学びたい者に適当な施設を用意することができるようになれば、直ちになくすべきものであると考えなければならない。」

1951年9月11日文部省初中局長通達 第660号
 「(高等学校入学者選抜方法を改善する方向は)志願者が特定の学校に集中しないようにすること、なるべく多数の志願者を入学させることのほかに、解決方法がないことが痛感された。当時既に学区制と総合考査制とが唱道され、若干の府県において実施されたという事実は、われわれに大きな示唆を投げかけるのである。」
 「入学志願者が募集人員に満たない場合は、全員入学を許可する。」
 「(学力検査を行う必要が生じた場合には)都道府県教育委員会および地方教育委員会の協力による各都道府県ごとに一斉に行う」
 「実施方法および問題作成に関し、都道府県ごとに」設けられる「委員会の中学および高等学校の委員の数は両者同一とする。」

1956年 施行規則一部改正
 「選抜のための学力検査」を行う。
「都道府県及び市町村の教育委員会は、相互に協力して、同一の時期及び問題により、学力検査を行うよう努めなければならない。」

1963年 8月23日 施行規則改正
「特別の事情のあるときは、これ(学力検査)を行わないことができる。」

  同年 公立高等学校入学者選抜要項
「高等学校の目的に照らして、心身に異常があり修学に堪えないと認められる者その他高等学校の教育課程を履修できる見込みのない者をも入学させることは適当ではない。」

1984年7月20日 文部次官通知『学校教育法施行規則一部改正について』(要旨)
  1. 公立高校の入試は、同一時期、同一問題で行う必要はない。
  2. 各高校・学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力適性等を判断して行う。
  3. 受験機会を複数にする。
  4. 調査書の重視、学習以外の記録の積極的利用。
  5. 普通科の推薦入学を積極的に行う。
  6. 面接の積極的利用。
  7. 特色ある高校の学科等については、可能な限り広い範囲から受験できるようにする。
1987年 臨教審第三次答申 後期中等教育の多様化(関連部分引用)
  1. 学力検査・調査書・面接・論文(作文)等の利用の仕方、比重の置き方は各高等学校・学科の特色に応じて定めるようにする。
  2. 受験機会の複数化。
  3. 推薦入学を普通科も含めて推進する。
  4. 各学校の個性化・特色化を推進するとともにそれらを配慮した入学者選抜を行い、それぞれの学校の教育を受けるにふさわしい者を入学させる。
1993年1月 高等学校教育の改革の推進に関する会議第3報告
「高等学校入学者選抜の改善について」

1993年2月22日 文部省通史通知「高等学校の入学者選抜について」
  1. 公立学校の入学者選抜の改善について
    1. 多様な選抜方法の実施
    2. 多段階の入学者選抜の実施について
    3. 入学者選抜の資料について
    4. 学力検査の在り方について
    5. 調査書の在り方について
    6. 面接について
    7. 通学域について



(3)「総合的選考で重視する内容」にかかわる実態調査

1).はじめに
 1996年7月に、高総検学区入選グループでは、97年度入試を間近に控えて「総合的選考で重視する内容」を検討する各学校現場の実態を調査した。「入試改変」に関して以前から予想されていたような、各現場の混迷ぶりが伺える結果となった。

2).アンケート集約     回答数   84分会
1.検討過程について
 (1)検討組織について     (重複回答を含む)
A)教務部
B)カリキュラム検討委員会
C)入選委員会
D)「魅力・特色」プラン委員会
E)その他
[その他の内訳]
  (1)学校のあり方委員会
  (2)コース制では推進委員会
  (3)入選事務局
  (4)入選検討委員会
  (5)校務委員会or学校運営委員会
  (6)入試選抜の特別委員会
  (7)カリと入選の臨時合同委員会
 5分会
10分会
33分会
30分会
13分会

1分会
1分会
1分会
2分会
2分会
5分会
1分会
 (2)検討過程で生じた問題点         39分会回答
 回答は、おおよそつぎのような内容をもっている。
  • 「情報不足」を内容とするもの
  • 圧力とまでは言わないまでも、管理職の干渉を内容とするもの
  • 特色プランづくりとの関係に関するもの
  • 検討組織に関するもの
  • 現場職員間のコンセンサスづくりに関するもの
  • 作業日程に関するもの(年度末の多忙時と期間の短さ)
  • 県の対応の不明確さに関するもの
  • 組合本部対応に関するもの
8件
6件
3件
2件
2件
2件
3件
3件
2.再提出について
(1)再提出を求められた
(2)再提出を求められていない
39分会
33分会
 アンケートの回答に現れた県教委側の「再提出の理由」は、大方は、特定科目や特定項目(部活動、地域活動など)を明記させることにあるようだ。各校への個別的な再提出の要求は次のようになされている。
3).アンケート集約の結果から
 今回のアンケートの回答と県教委が7月に発行した『平成9年度神奈川県公立高等学校入学者選抜 募集案内』を見比べてみると次のような状況が浮き彫りになってくる。
《学校現場では特色プランとの関係に苦慮》
 特色づくりプランとの関係を付けようとする現場の苦悩が見え隠れする。特に検討組織をどこにするかということに先ずそのことが現れている。入選委員会と答えている分会が、33分会あり、プラン関係委員会が30分会という中で、特別委員会を含めて新たな組織での対応を考えているところが、13分会あった。これらが特色プランとのからみで出ていることは明らかであるから、特色プランの委員会の30分会とあわせると、回答分会の半数が、特色プラン関係委員会によって、新しい入選における「総合的選考」について検討していることになる。この結果は、今回の特色プランづくりと入選改革が一体のものとして、県が学校現場に降ろしてきたものであることから考えれば、さして不思議な結果ではない。

《学校現場の対応とは裏腹に特色プランを忘れた県教委》
 しかし、結果から考えるならば、「総合的選考」の検討過程における県の対応は、各校の「特色」に絡めての苦心惨憺の検討結果(3月25日の報告書)を「中学生にわかるように」「具体的に」「箇条書き」することで、各校の特色は現れてこなくなった。各校が「特色」を持つことの是非については、ここでは置くとして、各校が特色プランとの関わりで、「泥縄式」に作ったものであれ、「ごまかしを取り繕う」ものであれ、「特色の方針との矛盾を感じ」ながらも、総合的選考で特色を出そうとした努力は、形としても現れないものになっている。

《神奈川版 文部行政の高校多様化路線》
 今回のどさくさ紛れの入試改革は、受験機械の複数化(神奈川においては「複数志願制」)とともに、文部行政の進める普通科高校における入試の多様化を進めることが第一義的であったが、改めて明らかとなった。

「新入選制度はなにをもたらしたのか」目次へ
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3.「新神奈川方式」の現実




(1)  アンケートにみる現場の実態

 97年3月に、高総検学区入選グループは、現場の実態を把握することを目的として、アンケート調査をおこなった。年度がわりの忙しい時期であり、とくに入選担当者にとっては、入選後の処理作業等にかかわらなければならない時期である。しかも、アンケート調査をおこなう、われわれの側も、初年度ということもあり、何を項目としてあげるべきかまとまらないまま、無理を承知でアンケートをお願いする結果になってしまった。

回収総数   114分会   回収率68.7%
 忙しいなか、また年度をまたがるかたちになってしまったために、現場には大変な迷惑をかけてしまったが、ほぼ七割の分会の協力を得ることができた。
 ただし、調査Aの部分、県に提出したデータをふくめた数値部分については、本グループの調査項目の設定の仕方に不備があったため、回答にあたっての解釈にズレがみられたことなどから、今回は報告を控えさせていただきたい。ここでは取り合えず、調査Bの記述部分を中心に、整理、報告する。

(1)第一希望選考について

ア)志願状況について
 「例年との比較で、地域分布、中学校の傾向等に変化がみられましたか?」という問いに対して、大部分の学校の答えは、特に変化がなかったというものであった。しかし、一部の学校では若干の変化が見られた、という答えも返ってきた。その要点を以下に整理する。

  ア) 普通科における学区外からの志願者の変化
     増 2校
     減 5校
  イ) 特例校における学区外からの志願者の変化 増、減 各1校
  ウ)職業科における志願者の広域化 回答を寄せた11校中4校
  エ)その他
  今まで来なかった中学からの志願者増
全体的志願者増
評定値は低下
他校第二希望が多い
私学に流れた
1校
1校
1校
1校
1校
 もし、県教委が繰り返し述べているように、今回の改変が「入れる学校から、希望する学校へ」という意図をもっていたとするならば、中学生の出願状況に、何らかの変化が生ずるはずである。その意味では、改変の意図は不発に終わったとみるべきであろう。
 ただし、職業科高校の中では、少なくとも一部では、志願者の広域化があったようである。高校全体を考えた場合に、出願生徒の地域分布等に大きな変動がなかったとしても、入選改変による若干の変動の中で、いわゆる「学力的」に、もっとも不利な状況に置かれた生徒が、「入れる学校」を求めて動かざるをえなくなったのだろうか。この点は、さらに今後も検証していく必要があるだろう。
 また、学区外志願者についても、目立った変化はなかった。ただし、増減があったと答えた学校は、それぞれの学区の「上位校」と「下位校」であった。

イ)第二希望の出願校

すべての学校において、該当校よりやや下位と思われる学校名があがっている
 「上位」「下位」という判断のしかたには、問題があるだろう。しかし、いわゆる「学校間格差」なるものが存在することは事実である。該当校よりやや下位の学校が、例外なくあがっている。これは、ほぼ予想どおりの結果である。ことさら学校間格差を確認するようなことをすべきではないという批判もあったが、この入選改変の結果、第一希望校と第二希望校の組み合わせとして、学校間格差が、より明確になる結果になったことだけは確かであろう。

ウ)志願変更について

志願変更の減少
志願変更が中学間で偏りがあった
志願変更により、同一校志願者が増加
志願変更ABは無意味
同一校内部での普通科からコースへの変更
倍率が高い学校への志願変更がみられた
8校 (例年より多かった、予想より多かったは0)
4校
5校
3校
1校
1校
 現場の印象としては、志願変更は、予想よりも少なかったというところであった。それぞれの学校の「特色」が明確であり、出願後受検生が迷う余地もなかったから、志願変更が少なかったとはとても思えない。むしろ、合否可能性が読みにくかったために志願変更が抑えられた、と見る方が妥当ではないだろうか。この点は、後で実際の数値を見ながら検証することにする。

エ)第一希望選考における「C点による選考対象者からの除外(いわゆる「足切り」、総定員の100%、第一希望の倍率L25までの対象者の絞り込み)」について

 回答校の中52校がこのラインに達していなかった。
 新聞紙上では、第一希望の最終倍率1.45倍と報道されていた。しかし、この一見「高い倍率」も、第一希望募集枠が総定員の80%であることを考えるならば、1.25倍でやっと定員の100%になる。そのラインにも達していないということは、前年度までの基準でみれば、すでにこの段階で、52校が定員割れをおこしていたことになる。

オ)「選抜の基準」について

最後にC順位にもどった(C重視)
基準とC順位の矛盾を感ずる
来年はC順位に近づけたい
基準が理解されているか疑問
ある程度成績を加味
基準があいまいで拡大された
特記重視になってしまった
基準どおりでは欠員が生ずるので、工夫した
客観的比較は困難
調査書の内容で判断できない
1校
2校
1校
2校
1校
1校
1校
1校
1校
2校
 とくに記入していない学校が多かった。ただ、最終的にC順位にもどった学校があるなど、C順位の問題を取り上げた学校が、何校かあることに注目したい。また、欠員が出ることをおそれ、「工夫した」答えてきた学校もあった。現場の苦悩をあらわしているとも言えよう。

カ)その他

C値で決まるとおもっている受検生がいる
私立中出身者の扱いに問題あり
過年度の扱いに問題あり
事務作業が難しい(取消の扱い、時間がかかる)
「足切り」に問題あり
調査書の記述内容に問題あり(担任により差があるのでは?)
選考で重視する内容が意図と違った
選考基準の見直し
選考で重視する内容と調査書の記述が合わない
総合的選考は無意味(問題あり)
「学習の記録」が使えなかった
合格者確保のため操作の噂
中学校側が本校の基準にあわせた
欠員が分かっていながら不合格者を出す矛盾
「輪切り」が明確化
学力のみによらない入試ができた
志願者が少なかったのは、本校の「特色」に問題があるのではない
1校
1校
1校
3校
1校
1校
1校
3校
1校
1校
1校
1校
1校
1校
2校
1校
1校
注:一部重複あり
 「その他」ということで、様々な意見が記される結果になった。1校だけ、「学力のみによらない入試ができた」という、前向きとも見ることのできる評価をもった学校があった。しかし、ほとんどは、今回の入選の混乱、矛盾、不合理性、様々な問題を伝えるものであった。

(2)第二希望選考について

ア)第一希望出願校

すべての学校において、該当校よりやや下位と思われる学校名があがっている
 まったく、第一希望の場合と同様である。ほぼ例外なく、第一希望校と第二希望校の組み合わせとして、学校間格差を確認する結果になってしまっている。

イ)第二希望選考における、選考対象者の一部除外(いわゆる「足切り」)について

横浜北部
  中部
  南部
横・三
川崎
藤沢・鎌倉
県北
県央・平塚・県西・秦野伊勢原
2校
1校
3校
3校
3校
1校
1校
なし
 県東部を中心とするいくつかの学校以外は、第二希望の選考対象者の数は、一部を除外する必要もない数であった。第一希望、第二希望とも同一校を希望した受検生が、100%近い数値をしめした秦野伊勢原学区の学校からは、「『足切り』も何も、定員ちようどなのだから」という声が返ってきている。なお、実施した学校の「基準」は、「第一希望と同じ」「C点をつかい」となっている。

ウ)その他

同一校志願者がほとんど不合格(不利)
同一校志願者が多かった
C順位をつかった
他学区よりの受験者がめだった
第一希望より点数が高い
第一希望・第二希望の組み合わせが明確
意欲不足
そもそも定員に足りない
地元が多かった
上下の差が大きい
予想より多かった
第一希望から回ってくるはずが来なかった
「基準」どおりでは差がつかなかった
「総合的選考」の矛盾を感じた
3校
1校(工業)
1校(市立)
3校(すべて横浜市内)
6校
4校
1校(総合学科)
2校(県北)
1校(県北郡部)
1校
1校
1校
1校(工業)
1校
注)一部重複あり
 様々な問題点の指摘がある。おそらく、問題点は、とうてい書ききれない、というのが実感ではないだろうか。

(3)入選作業について
 この項目について、記入していない学校は14校のみであった。さらに、別紙で問題点を詳細に指摘してきた学校も2校あった。その内容は、次に列記する問題点と「新神奈川方式」そのものの批判であった。また、整理の仕方が強引であり、現場の実感が十分に伝わっていないとのお叱りを受けるかもしれない。おそらく、現場の実感は、アンケートで伝えられるものではないだろう。

マニュアルの問題を指摘
システムの問題を指摘
県教委よりの「指示」の不適切
時間的に余裕がない
トラブルの発生
海外帰国生徒の扱い
書ききれないほど問題が多い
作業負担の増加
セキュリテイーの問題
データを学校で利用できない
不安がある(制度全体)
コンピュータの台数不足
県教委(と組合の取組)に対する批判
 3校
14校
 5校
 5校
 6校
 1校
 9校
40校
 1校
 2校
 1校
 2校
 1校
注)一部重複あり
 もちろん、ここに上げられている問題点は、どちらかと言えば技術的な問題である。しかし、作業負担が大幅に増えたということは、だれもが認める事実であろう。この入選改変で、もしも学校間格差が多少とも縮小された、中学生の負担を軽減することになった、などの何らかの改善が、明らかに認められたならば、おそらく入選作業の重い負担も、多少はがまんのできるところだったかもしれない。だが、何ひとつとして改善を実感するニともできず、ただシステムの矛盾、不合理さを感じただけであった。だからこそ、作業上の負担が、より重く虚しいものとして問題視されることになったのではないだろうか。



(2)  欠員発生について

       −すべての学校にかかわる問題として−

「入れる学校から行きたい学校へ」という今回の改革を受けて、生徒たちが選択した結果だと思う。
(3月6日朝日新開)
 これは、59校641人という近年にない大量の欠員が発生したことに対する、県教委指導部長の答えであった。今回の入選改変により、受検生は安心して「行きたい学校」を選ぶことができるようになった。そのため、受検生に敬遠された学校、「行きたい」と受検生に思われなかった学校は、受検生を集めることができなかった。だから、大量の欠員が発生した。それゆえ、欠員発生の主たる責任は、「行きたい」と思われるような学校をつくることができなかった、あるいはPRできなかった学校現場にある。一方、入選制度そのものにも、入選改変を進めた行政の側にも、直接の責任はない。県教委指導部長は、たぶんこう言いたかったのだろう。これでは、欠員の発生した学校現場の立つ瀬はない。現実はどうなのか。不十分な検証ではあるが、大量欠員発生の経緯を探ってみたい。

(1)欠員の発生状況
 次は、今年度の入試において、合格発表時点で、10名以上の欠員を出した普通科高校である。(職業科については学科ごとの特徴もあり、また後で学区の問題もあつかう関係から、とりあえず普通科に限った。)


松陽
横浜日野
川崎
新城
住吉
生田
大井
大和
大和西
座間
上鶴間
相武台
相模大野
弥栄東西
上溝
上溝南
橋本
相模田名
城山
欠員数
14
16
29
37
21
14
10
12
23
13
17
14
10
18
17
36
38
26
27
欠員率(対募集定員比)
 5.0%
 6.7%
10.4%
12.1%
 7.6%
 5.1%
 3.1%
 4.3%
 8.3%
 4.1%
 6.1%
 5.9%
 3.6%
 4.7%
 7.1%
11.3%
10.6%
 9.4%
 7.5%

 これらの学校は、指導部長の言葉にしたがうならば、「魅力・特色づくり」に失敗した学校になってしまう。何しろ、「こどもたちが、希望する学校を選んだ」ところに、欠員が発生した理由がある、と言うのだから。だが、受験生が「自由」に「行きたい学校」を選ぶことのできるはずの、第一希望の段階で、これらの学校は本当に「敬遠」されていたのだろうか。もし、これらの「学校」に問題があるならば、欠員発生はごく一部の「失敗した」学校に限られた問題になる。だが、もし「学校」の問題ではなく、「制度」そのものが「失敗した」のであるならば、欠員発生は「全ての学校」にかかわった問題となるだろう。

(2)第―希望枠の状況

 次は、これらの学校の第一希望枠の志願状況である。


松陽
横浜日野
川崎
新城
住吉
生田
大井
大和
大和西
座間
上鶴間
相武台
相模大野
弥栄東西
上溝
上溝南
橋本
相模田名
城山
志願者数
270
196
298
318
312
398
315
282
284
299
265
229
296
426
234
292
343
251
339
倍率
1.21倍
1.03倍
1.34倍
1.43倍
1.27倍
1.79倍
1.24倍
1.27倍
1.28倍
1.18倍
1.19倍
1.21倍
1.33倍
1.38倍
1.23倍
1.15倍
1.20倍
1.13倍
1.19倍
学区平均倍率
  1.37倍
  1.45倍
  1.47倍
  1.47倍
  1.47倍
  1.76倍
  1.29倍
  1.28倍
  1.28倍
  1.28倍
  1.31倍
  1.31倍
  1.31倍
  1.31倍
  1.25倍
  1.25倍
  1.25倍
  1.25倍
  1.25倍
倍率差
-0.16
-0.42
-0.13
-0.04
-0.20
+0.03
-0.05
-0.01
±0.00
-0.10
-0.12
-0.10
+0.02
+0.07
-0.02
-0.10
-0.05
-0.12
-0.06

 第一希望の募集枠が総定員の80%になってしまった以上、当然のことかもしれないが、出願段階の倍率が1.0を下回るような学校は、全県下に一校もなかった。たしかに、欠員の発生した学校の中には、学区の平均値からみて、かなり低倍率の学校もある。しかし、一部をのぞけば、学区平均からそう隔たった数値ではない。事実、これらの学校より低倍率をしめしていても、最終的には定員を充足することができた学校もある。第一希望枠の出願状況をみるかぎりでは、欠員の出た学校が、取り立てて「人気のない学校」だったとする根拠を見いだすことはできない。

(3)第ニ希望枠の状況

 次に第二希望に関するデータを見てみる。そもそも、この「複数志願制」というシステムのもとで、最終的に欠員が生ずるのは、第二希望の段階で定員を充足できなくなる場合である。



松陽
横浜日野
川崎
新城
住吉
生田
大井
大和
大和西
座間
上鶴間
相武台
相模大野
弥栄東西
上溝
上溝南
橋本
相模田名
城山

定員
 56
 48
 56
 61
 56
 55
 64
 56
 56
 64
 56
 47
 56
 78
 48
 64
 71
 56
 72

志願実数
 240
 241
 288
 283
 263
 286
 323
 243
 261
 279
 294
 231
 276
 373
 221
 290
 284
 293
 364

志願倍率
4.29
5.02
5.14
4.64
4.70
5.20
5.05
4.34
4.66
4.36
5.25
4.91
4.93
4.78
4.60
4.53
4.00
5.23
5.06
学区
平均倍率
 5.56
 5.79
 5.90
 5.90
 5.90
 7.07
 5.13
 5.29
 5.29
 5.29
 5.15
 5.15
 5.15
 5.15
 5.08
 5.08
 5.08
 5.08
 5.08
選考
対象者数
  42
  35
  27
  24
  35
  41
  54
  44
  33
  52
  39
  33
  47
  60
  31
  20
  27
  30
  45
選考
対象倍率
 0.75
 0.74
 0.48
 0.39
 0.65
 0.75
 0.84
 0.79
 0.59
 0.81
 0.70
 0.70
 0.84
 0.77
 0.65
 0.31
 0.38
 0.54
 0.63
選考
対象者率
17.5%
14.5%
 9.4%
 8.5%
13.3%
14.3%
16.7%
18.1%
12.6%
18.6%
13.3%
14.3%
17.0%
16.1%
14.0%
 6.9%
 9.5%
10.2%
12.4%
 出願段階でみるならば、各校の第二希望の倍率は、第一希望の倍率と同じく、ほぼ各学区の平均値前後におさまっている。たしかに、高い倍率はしめしていない。しかし、第一希望の場合と同じく、これらの学校より低い倍率でも、最終的には欠員の発生しなかった学校も存在するのである。
 問題は見かけの倍率ではなく、実際の選考対象となった者の数である。ここで一番右端にある、各学校の「選考対象者率(第2希望の選考対象者を第2希望の出願者で割ったもの)」を見てほしい、最低値が6.9%最高値が18.6%である。一方、公立全体の平均値は23.7%である。この「選考対象者率」に関しては、欠員の発生した学校の多くは、かなり平均値から、かけ離れてしまっている。
 そもそも、第二希望の倍率が、見かけ上どんなに高くとも、選考対象に何人残るかは、また別の話である。第一希望の選考段階で、どの程度合格するか、私学への流出がどの範囲でおさまるか、これらの条件は文字通り「蓋を開けてみる」までは、分からなかった。「選考対象者率」などは、だれにも正確に予測することのできなかった数値である。もっとも、この問題は、「複数志願制」導入の当初から、十分に予想のついていた問題ではあった。
 もし、来年度以降もこの制度が続く場合はどうなるのだろう。たしかに、受験産業の力をもってすれば、多少は「選考対象者率」も、読めるようになるかもしれない。しかし、欠員発生は、せいぜい数%の誤差、実数では10人内外の誤差でも発生する。そこまで正確に読めなければ、同じことの繰り返しである。しかも、第一希望の30%は「総合的選考」の対象であり、それがどのような中身になるかは、実際の選考対象者を見てみなければ、高校現場にも分からなかったのである。十分にデータをそろえた受験産業であっても、「複数志願制」と「総合的選考」のもとで、そこまでの精度をもって読み切れるだろうか。その意味では、欠員発生は、可能性としてはどの学校にも、つきまとっているのである。そして、受検生の立場にたってみれば、欠員発生の可能性は、「予想外の合格」と「予想外の不合格」の可能性でもある。安心して受験にのぞめない学校を、どうして受検生が選ぶであろうか。

(4)定員割れを起こした学区

 ところで、これまでも、学区間の平均倍率には、かなり大きな開きがあった。概して言えば、横浜、川崎は倍率が高く、県西部は倍率が低かった。ところが、今年は、学区そのものの定員割れという極端な事例まで出現した。
 「新神奈川方式」のもとでは、第一希望の募集定員は、募集定員全体の80%となっている。したがって、大部分の受検生が学区内で動いていると仮定するならば、第一希望の受検倍率(最終競争率)が1.25以上にならなければ、学区全体の募集定員を受検者数が下回っていることになる。今回の入試では、そのような学区が3学区発生した。だから、これらの学区について言えば、どこの学校になるかは別として、大幅な欠員発生は避けられない事態になっていたのである。

大和座間綾瀬学区   第一希望最終競争率1.23倍
総募集定員
第一希望志願者数

学力検査受検者数
合格者総数
欠員数
 2,334
 2,391
(1.02倍)
2,304 (-30)
 2,286
   62
96年度募集定員
96年度志願者数

96年度学力検査受検者数
96年度合格者総数
96年度欠員数
2,453
2,708
(1.10倍)
2,597 (+44)
2,486
   0

相模原南部学区    第一希望最終競争率 1.23倍
総募集定員
第一希望志願者数

学力検査受検者数
合格者総数
欠員数
1,695
1,773
(1.05倍)
1,665 (-30)
1,637
  63
96年度募集定員
96年度志願者数

96年度学力検査受検者数
96年度合格者総数
96年度欠員数
1,693
1,797
(1.06倍)
1,689 (-4)
1,679
  15

相模原北部津久井学区 第一希望最終競争率 1.17倍
総募集定員
第一希望志願者数

学力検査受検者数
合格者総数
欠員数
2,335
2,333
(1.00倍)
2,212 (-123)
2,196
 147
96年度募集定員
96年度志願者数

96年度学力検査受検者数
96年度合格者総数
96年度欠員数
2,334
2,557
(1.10倍)
2,415 (+81)
2,339
  10

 このように、相模原北部津久井学区は志願確定段階から、他の二つの学区は受検段階から定員が割れる状態になっていた。
 今年度の定員割れの原因を、受験から合格発表までの日程が長すぎたことに求めようとする声も、一部にはあった。しかし、受検段階ですでに、定員割れが明確になっていたことを考えると、「待ちきれなくなった受検生が私立に流れた」のではなく、「最初から」公立受験が敬遠されていたところに、欠員発生の原因を求めざるをえないであろう。
 また、公立高校の開門率設定に「読み違い」があったという解釈をする向きもあるかもしれない。しかし、もっとも定員割れの激しかった相模原北部津久井学区は、同時に、高校への進学率が、もっとも低い学区でもある(\期 高総検報告 別冊 参照)。また、他の学区とは大きく異なった、高校進学を妨げる社会的条件が、これらの学区にあるということ解釈も難しい。すでに高校進学率が高水準に達し、これらの学区の募集定員が高校進学希望者の数を上回ったがために、定員割れがおこったという解釈は成り立たちがたいのではないか。
 では、公立敬遠の最大の原因は何か。過去、私学が計画進学値を達成することなく、ここ数年は、むしろ公立への進学傾向が強まっていたことを考えると、「公立」そのものが敬遠されているとは考えにくい。結局、ここまでの状況証拠から見るかぎり、今回の入選改変(「複数志願制・総合的選考」と「魅力・特色づくり」)に、大量の欠員発生の原因を求めるのが、もっとも妥当な判断だという結論になるだろう。

(5)含格レべルに達していない「新神奈川方式」

 欠員発生による問題点とは何か。もちろん、再募集を行わなければならなくなった現場の負担は大きい。もし開門率がすでに高水準であり、「希望者全入」が事実上実現されている状況であれば、欠員が発生すること自体に問題はないだろう。しかし、いまは全日制高校への進学を希望しながらも、なお多くの中学卒業生がそこから排除されているのが実情である。「進学機会を拡大する方向で柔軟に計画進学率を見直していく必要がある」ことは県教委の諮問機関である高課研でさえ、一次報告でみとめているのである。希望者がいながら、募集定員が希望者数を下回っていながら、それでも多くの学校で欠員が発生してしまった事態は、深刻に受けとめなければならない。
 受検生にとって、事態はより深刻である。全員合格になった1校を除き、欠員の発生した学校でも、第一希望粋では、多くの不合格者を出していた。その数は、欠員発生校全体で、1,519名にのぼっている。もちろん、この中には同一校志願者も含まれている。また、最終的な合格発表前に、私学への進学を決め、公立高校の選考から外れていった受検生もいるだろう。あるいは、第二希望校合格で終わった受検生もいるだろう。だが、最終的にどこかに納まればよい、というものではない。「入れる学校から行きたい学校へ」と言っておきながら、第一希望で振り落とし、あげく欠員が生じているのである。第一希望枠の選考で多数の不合格者を出しながら、なお欠員を出さざるを得なかった、現場も苦い思いをしている。まして、第一希望校を諦める結果となった受検生にとっては、取り返しのつかない悔いが残る結果だっただろう。
 県教委は、今年度の入選について、受検生がどのように感じたかを調査するため、新一年生に対する、アンケート調査をおこなった。新入試制度に対し、好意的な回答が返ってきているようである。ただし、合格した受検生に対するアンケートである以上、結果は聞くまでもないだろう。高校1年生の大部分は、ともかく合格したことに、高校生活がおくれることに、素直に満足しているはずだからである。考えなければならないことは、不合格になった受検生に対しても、一定の説明がつく入選制度を、われわれが持っているかどうかである。志願者全員を合格させるものになっていない以上、この観点は、つねに持ち続けなければならない。この観点からするならば、「複数志願制」と「総合的選考」を目玉とする「新神奈川方式」は、とうてい合格レべルには、達していないと言わざるをえないだろう。



(3)  中学校側のとまどい

 新しい入試制度を目前にした1996年10月、神教組湘北教組の教研集会が開催され、共同研究者として参加する機会があった。また翌年1997年2月には神教組西湘教組の教研集会にも神高教として招かれた。
 新入試制度についてのくわしい情報がなかなか現場教師にまで伝わらなかったこともあり、多くの質問が出された。また、どのように調査書を書くのかという悩みや、高校側ではどのように選考するのかわからないという意見を出し合う中で、改めて中学校側の戸惑いが感じられた。

中学校側の主な意見
  1. 複数志願制について
    • 第1希望が80%となり、新入試制度の“行きたい学校"の枠がかえって狭まるという矛盾を引き起こしている。見かけの倍率も当然ながら上昇し、受験生にとっては不安である。
    • 第1、第2を同一校にするかどうかで悩んでいる。最終的には生徒の希望に任せざるを得ない。
  2. 推薦枠の拡大について
    • 高校の推薦基準があいまいで、中学校でどのように選ぶか難しい。また公私立推薦合格者と進路未決定の受験生が混在する中での3学期の授業がますますやりにくくなった。
    • 高校の推薦基準があいまいなので、合格可能性がよくわからない。本人の希望を尊重して志願させることになる。
    • 受験機会が増えるのはいいことではないか。
    • 入試に落ちるショックを何回も味わうことになりかねない。
  3. 「重視する内容」、総合的選考について
    • 特別活動や校外活動ヘの参加動機が不純なものになることは、生徒の心の発達にとって問題である。
    • 「重視する内容」に特定教科をあげることにより、その教科を不得意とする生徒を排除する結果になる。
    • ボランティア活動など校外活動を本来の主旨と異なることに用いることは疑問である。また中学校側で責任もって把握できないことである。
    • 部活動については職員の高齢化等のため軽減化する方向にある。「重視する内容」は部活動の実績ではなく、活動状況にすべきである。
    • 塾のすすめ?で英語検定の受検者が増加した。
    • 「重視する内容」が具体的にどのように選考基準として用いられるのかわからない。
  4. 調査書の記載事項について
    • 地区校長会で書き方のマニュアルをつくった。
    • 所見欄など中学校教員の作文コンテストにならないか心配である。
    • 事実の記録が書ける子はいい。しかし実績のない子、目立たない子、おとなしい子は多く書けない。そういう子が救われる方法を考えて欲しい。
    • 特記事項は学年会で決めているが、合否の影響がはっきりしない。
 この意見からは新入試制度に積極的に賛成するものは見当たらない。それまでの調査書、ア・テストで合否が見えた制度の中ではある程度合否の予測がついた。それがア・テストが選抜資料からはずされたこと、さらに約半分の44%の選考が「重視する内容に基づく総合的選考」となり、合否の予測がかなり困難となった。“15の春を泣かせない"ためにも中学校には都合の悪い制度である。
 中学校での三者面談は歯切れの悪いものとなった。校内で禁止されている業者の模擬テストの受験を薦め、学力診断および合否判定をしてもらう。さらに中学浪人を出さない方針から執拗に私学併願をさせることとなった。大儲けした塾と私学にとっては誠にいい制度改革だった。
 中学校卒業者の減少は依然として続いているし、全日制進学率は92.5%に上げられている。高校の校舎と教員は中卒者を受け入れるのに十分である。つまり数字上は中学浪人を出さないで済むはずである。新制度はまだ1年目であり、生徒の立場に立った様々な手直しが必要である。例えば複数志願制の問題でいえば、2つの学校に志願したのは全県でも1/4であり、学区によってはほとんどいないところまであった。合格発表までの期間が長すぎたため、私学ヘの進学が増加したことや、再募集制度が有効に機能していないことなどである。
 もう一つは選抜基準が公開されていないことである。極めて抽象的な「重視する内容」を基に中学生が高校選択をすることは無理である。高校に対して、中学校から生徒にとってわかりやすい選抜基準の公開を求めていくことが必要である。

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4.97年度入試の実態




(1)  97・98年度「募集案内」の比較

 97年度と98年度の「募集案内」の間の変更点は、いくつかある。日程の短縮、推薦入学の募集枠の変更、学力検査の教科数・傾斜配点・面接・実技等の変更、「総合的選考で重視する内容」の一部変更(58校 内容にまったく影響がないと思われる表記上の変更を除く)である。これらの変更については、今後も資料を蓄積し、分析し、問題点等をあきらかにしていく必要があるだろう。ただし、今回は、変更数、パターン等を、とりあえず整理しておくに止める。また、日程の短縮により、97年度ですら耐えがたいほど大きかった現場の作業負担が、さらに増大することも確実である。そして、日程に余裕がなくなったことにより、昨年度は何とか回避できた、大きなミス、事故等が起こる可能性も、大きくなることだろう。この問題は、実際にこの日程で入選が行われた後で、実態を調査していくことにしたい。とりあえず、ここでは、今後にもっとも大きな問題を残す可能性をもつと考えられる、推薦入学募集枠の変更をとくに取り上げておきたい。

(1)推薦入学について

 推薦入学の範囲は全国でしだいに拡大されている。そして、推薦入学の拡大は、多くの弊害をもたらしている。推薦入学が広範に導入されることにより、たとえ推薦を受けない道が、まだ残されていたとしても、大部分の中学生は、推薦を意識して生活をせざるを得なくなってしまう。生徒会活動、部活動、ボランティア活動等は、表面上は活性化されたかのように見えるかもしれない。しかし、その実、中学校3年間の生活全体が、深刻な競争の場となってしまうのである。ある商業誌は、首都圏における推薦制の拡大の影響をレポートし、その中で「仮面中学生うむ、いい子競争」という表現までつかって、中学校生活の歪みを指摘している(アエラ1997.7.28)。こうした弊害を生み出す推薦入学の拡大については、今後も最大級の注意を払っていく必要があるだろう。

ア. 「募集案内」の変更点
 98年度「募集案内」では、各学科、専門コースの推薦入学の募集枠は、こう記されている。

専門コース
専門学科
神奈川総合
大師



「募集枠については、後日お知らせします」
 新聞記事等を参考にすると、この「後日お知らせします」の具体的内容は、普通科専門コースも、専門学科と同様に定員の30%まで推薦募集枠の限界を引き上げるということだったようである。(中には、「推薦入学について、専門コースすべてと専門科の募集人員を、定員の30%に引き上げることを決めた」と、推薦入学の募集枠が、一律に3O%引き上げられたかのような、誤った書き方をした新聞もあった。)
 これに対し、97年度の「募集案内」では、各学科、専門コースの推薦募集枠は次のようになっていた。

専門コース
専門学科
神奈川総合
大師
「募集定員のおおむね10%です」
「募集定員の30%以内で、各高校が決めます」
「後日に配付する『志願の手引き』で公表します」
「募集定員の30%以内で、高校が決めます」
 この内容は、「大綱」に記されたものを、そのまま引き継いだものとなっていた。「大綱」では、専門コースと専門学科の推薦入学募集枠は、「おおむね10%」、「30%以内」と定められており、その数値について、今後の見直しに含みを持たせるような説明等は、一切加えられてはいなかった。「大綱」の中の推薦入学に関する部分をあげておく。

推薦に基づく選抜
(1)推薦入学の実施校
 ア 普通科については,当該高等学校の特色に応じて実施することができるものとする。
  (大綱の説明  普通科については,専門コースにおいて、平成8年度入学者の選抜から実施できることとします。なお,専門コース以外の普通科については、今後の課題とし,引き続き検討していくこととします
 イ 専門学科については,全ての学科において実施するものとする。
(2)推薦入学の募集人員
 ア 普通科については,当該高等学校の入学定員のおおむね10%とする。
 イ 専門学科については,当該高等学校の学科ごとの入学定員の30%以内とする。
 そもそも、「大綱」は、神奈川の入選のあり方をしめす「責任ある文書」として発表されていたはずである。もしそうであれば、「大綱」に記された推薦入学の枠を定めた数値は、かんたんに動かせないもののはずである。推薦入学の募集枠が、「大綱」の本文に数値で明記されている以上、その数値を変更するためには、「大綱」そのものの部分改定という手続きがとられなければならないはずである。もちろん「大綱」そのものは、様々な問題を含んでおり、全面的に見直すべきものである。もし「大綱」全体にわたる見直しの方向が開けるなら、それはそれで望ましいことと言わなければらない。しかし、県教委の今回の手法は、「大綱」そのものを見直そうとするものではなく、むしろ「大綱」さえ無視して、その場その場の判断で都合よくつくりかえていこうとする手法である。この手法が罷り通るならば、「新神奈川方式」とよばれる入選制度全体が、――もちろんその制度自体が問題であるが――きわめて不安定な、その場限りの恣意的なものになってしまうだろう。

イ.「大綱」までの経緯
 さらに神奈川における推薦制の問題を探るために、「新神奈川方式」の方向づけをしたとされる、「神奈川県高等学校教育課題研究協議会(高課研)」の報告にもどってみる。「高課研」は、推薦入学に関して、こう報告していた。

 推薦入学については、これまで農業、水産、工業、厚生等の学科で実施されてきたが、‥‥他の特色ある学校・学科・専門コース等においても、推薦入学を実施できるようにすることが望ましい。
 なお普通科の一般コースへの推薦入学の導入については、今後の社会情勢の動向等も見極めながら、なお検討することが必要である
 その後、県教委は、「公立高等学校入学者選抜制度の改善案について(中間報告)」を発表した。その中では、次のように普通科一般コースにも推薦入学を拡大する方向が打ち出されていた。

推薦に基づく選抜
(1)推薦入学の実施校
 ○普通科一般コースについては,学校の特色に応じて実施できるものとする
 ○専門コースについては,その特色に応じて実施できるものとする
 ○専門学科については,すべての学科において実施する
(2)推薦入学の定員
 ○普通科一般コースについては,10%程度
 ○専門コースについては,10%程度
 ○専門学科については,30%以内
 この「中間報告」に対しては、諸方面から様々な批判が噴出し、県教委も一部を修正せざるをえなくなった。そして、「大綱」が発表され、「専門コース以外の普通科については,今後の課題とし,引き続き検討していくこととします」という表現になったのであった。推薦入学の範囲に限ってみるならば、「大綱」の段階で、県教委の姿勢は、一応「高課研」のレべルにもどったと見ることができるだろう。しかし、この間の動きを見るならば、推薦入学に関し、県教委がどこに向かおうとしているかは、明らかであろう。
 たしかに、推薦入学には、一定の魅力があるかもしれない。「意欲ある受検生」を早く確保できるのではないか。たんなる「学力」のみによらない選考が、可能になるのではないか。等々。しかし、推薦入学が一部の学校、一部の学科にとどまることなく、すべての学校に拡大されたとき、先に述べたような弊害は一挙に顕在化する。いまのところ神奈川では、普通科全体への推薦入学拡大は、なんとか避けられている。しかし、今回の「募集案内」の修正のような恣意的な手法が許されてしまうならば、来年度以降いかなる改定であっても、その場その場の都合で、どのようにでもできることになってしまう。その意味で、今回の「募集案内」の変更は、かんたんに見過ごすことのできない事態だと言わなければならない。
 (なお、高課研報告から現行「新神奈川方式」までの経緯については、次の資料を参照されたい。「新神奈川方式へのシナリオ」ねざす19号別冊 教育研究所)

(2) 学カ検査の教科数・傾斜配点・面接・実技の変更

 ア) 新たに学力検査の教科数を減らした学校は、2校(いずれも工業科)であった。
   その内容  国数社理英→国数英 と 国数社理英→国数理
   (97年度実施 専門コース3校  専門学科6校14学科 単位制2校)
 イ) 新たに傾斜配点を導入した学校は、1校(工業科)であった。
   その内容  数学と理科について、2倍の配点にする。
   (97年度実施 専門コース1校  専門学科4校4学科  単位制なし)
 ウ) 面接について変更があった学校は、4校であった(中止1・新実施3)。
   面接中止 外国語コース1校
   新規実施 工業科3校
   (97年度実施 専門コース5校  専門学科21校62学科  単位制1校)
 エ) 実技を新規に導入した学校は、1校(工業科デザイン)であった。
   内容     「簡単なスケッチや工作」
   他、実技の内容を若干変更した学校もあった。
   (97年度実施 専門コース3校  専門学科2校3学科  単位制なし)

(3) 選考に当たって重視する内容の変更

 今回、県が設定した「見直し」期間は、きわめて短く、しかも春の連休を挟んだ時期であった。そのため、「見直し」の必要を感じていても、結局「見直し」を見送らざるをえなくなった学校、あるいは、内容に不十分さを感じながらも、時間切れで提出せざるをえなくなった学校もあるだろう。この「見直し」のやり方自体に、大きな問題があると言わざるをえない。と同時に、それでも、58校が変更したことは、現場がそれなりに問題を感じていることの証左とも言えるのではないだろうか。
 また、「重視する内容」は、各校のおかれた様々な状況の下で、苦労を重ねて作成したものである以上、その個々の内容について、是非の判断をすることは差し控えなければならないだろう。これら点を踏まえた上で、具体的な変更の傾向を大雑把に整理してみる。ただし変更した学校は、一つの項目だけではなく、全体にわたり文言等を含め、変更しているので、例として上げたものも、内容が重複することになっている。

ア) 特別活動について、明らかな項目がなかった学校で、その項目を追加したケースが5校あった。

(1)特に優れた成果をあげた教科の学習成績(1項目のみ)
(1)特に優れた成果をあげた教科の学習の記録
(2)学力検査の中で特に優れた成果をあげた教科
(3)特別活動等に対する取り組み状況および学習の状況

イ) 学力検査について、その表現を明記した項目を追加したケースが、13校あった。
 例1
(1)行動の記録、特技・特徴
(2)部活動の活動状況と生徒会・委員会活動への参加状況
(1)行動の記録、特技および部活動(活動状況・実績)生徒会活動(参加状況)
(2)学力検査の国語、数学、英語の3教科の結果
 例2
(1)中学校における生徒会・委員会など特別活動、その他生活全般においてとくに秀でた事柄
(2)中学における学習活動において、特にすぐれた成果をあげた教科の学習成績および学習状況
(1)学級・生徒会・各種委員会活動などの実績および部活動の優れた業績
(2)基本的生活習慣および中学時代に伸ばした特技・特徴
(3)学習の記録において、特に優れた成果をあげた教科
(4)学習検査において、優れた成果をあげた3教科

ウ) 「AあるいはBのいずれか」という内容の文を削除した学校が、11校、この文を追加した学校が、5校あった。
次の(1)〜(2)のいずれかの内容
(1)各教科全般ヘの積極的な取組み状況
(2)学校行事、生徒会活動、部活動などの教科外活動への積極的な取組み状況
次の(1)〜(2)のいずれかの内容 を削除、(1)(2)はそのまま

エ) その他の変更の例
 項目の追加
 外国語を母語とし、日本語による学習にハンデを持ちながらも努力し、勉学意欲を持っていること

 教科数の変更
学カ検査においては、他の教科と比べ優れた成果をあげた教科
学力検査で優れた成果をあげた3教科

 教科の特定
 調査書の学習の記録における得意教科(1〜3教科)の学習成果および学習状況
学力検査の国語、数学、英語、3教科の成績






(2)  97年度入選データの整理と分析


1). 97年入選データ
  集計表
   (別表 1) 1997年度入選データ集計表
   (別表 2) 1996年度入選データ集計表
  グラフ
   (97G-1〜31) 1997年度入選、 学区・学科別、 出願・受検・合否状況
   (G-20) 学力検査前取消率の変化(学区別)、 '96→'97
   (G-21) 学区外受検者率の変化(学区別)、 '96→'97

 1997年度入試では大幅な制度の変更が行われ、志願の状況や競争率、新たに導入された複数志願制における同一校志願率、大量に発生した欠員などにその関心が集まった。ここでは学区・学科別にそれぞれのデータを集計した結果をもとに、今年度入試の状況を考察してみたい。

《複数志願制》
 今回の新入試制度のもっとも大きな変更点ともいえる部分である。受検生は第1希望校と第2希望校の2校に同時に出願し、1回の学力検査の結果をもとに2校での選抜を受けるという制度であった。第1希望、第2希望とも同じ学校に出願する同一校希望率の高さが話題を呼んだ。受検生がこの制度にどのように対応したのか、その状況をもう少しくわしく見てみたい。

  同一校希望率 第1希望志願者/募集定員 第2希望志願者/募集定員
全体0.7791.1581.158
普通科0.7771.1471.154
普通科専門コース0.7571.0390.935
専門学科0.8021.2031.183
単位制普通科0.6523.7282.536
単位制総合学科0.8871.3151.506
 上の表では、第1希望枠に対する第1希望志願者の倍率ではなく、第1希望者総数と第2希望者総数それぞれの募集定員に対する比率を求めてみた。このデータは普通科専門コースと専門学科については複数の学校の数値の総和であり、個々の学校や学科においては逆転している場合もあるが、全体の傾向を見渡すためには一定の有効性を持っているものと思われる。
 特色を見て受検生が行きたい学校を選ぶということが、今回の新入試制度におけるポイントのひとつだとすれば、それぞれ極めて特色ある学校である普通科以外の各学科・課程への希望の状況から一定の傾向を読みとることができるのではないだろうか。普通科高校の個別の学校についても、それぞれのデータを検討すると、第1希望に希望が多く集中し第2希望では志願者が少なかった学校、あるいはその逆の学校をそれぞれ見いだすことができる。以下の分析はそれらの学校にも共通する内容を持っているものと思われる。
 同一校希望率は表にある通り、競争率が著しく異なり一概に比較することはできない。ここで学区ごとの第1希望倍率と同一校希望率の相関グラフを見てみたい。ここには典型的ないくつかの学区を抜き出して見たが、倍率が高い学校ほど同一校希望率が下がる傾向を見いだすことができる。すなわち複数志願の第2希望が受検生に「すべり止め」として活用されていることを反映している。


 つぎに第1希望および第2希望の対募集定員比を検討したい。普通科以外の学科・課程はおしなべて第1希望倍率の方が高くなっている。ここにはまず行きたい学校としてこれらの学校を第1希望校として選び、第2希望には他の学科・課程を選択する、という傾向を読みとることができる。どうしてその学校を選ぶか、という個々の受検生にとっての理由・動機はともかく、ここでは複数志願制がまず所期の目的を果たしているかに見える。
 しかしこの表における普通科専門コースのように、第2希望者数が少ない学校では、第1希望校としてそこを希望する受検生が定員を満たしていながら、第1希望定員が募集定員の80%であることにより、複数志願制でなかったら合格していたはずの、20%の受検生は不合格になり、かつ第2希望の選考では定員を割り込んで欠員を生じるという現象が起きる。
 逆に第1希望者よりも第2希望者が多いところでは、第1・第2ともその学校を希望した同一校希望者が第1希望定員枠である80%に入れず第2希望選考に回ると、そこでは他校から回ってきた第2希望選考受検者が加わって第1希望よりも高い倍率で改めて判定され、その一部は確実に不合格となる。ここでも「行きたい学校」である第1希望校の選考で不合格になった受検生が第2希望校に合格し、複数志願制でなかったら合格していたはずの同一校志願の受検生が不合格になるという現象が起きる。
 複数志願制が進学先の選択の幅を広げるという機能を持っているとしても、制度の複雑化に伴い出願状況の偏りが一層増すことによって、不可避的に欠員を生み出し、同時に不合格者も生じるという構造になっていることは否定できない。

《欠員》
 本報告書の別稿には個々の学校のデータを元にした分析があるが、ここでは欠員率が2%を超えた4つの学区に注目して分析を試みてみたい。

 相模原北部・相模原南部・大和座間綾瀬の3つの学区は、出願時1.05〜1.00倍、受検時O.99〜O.95倍(注;ここでは第1希望志願者/第1希望定員で求める名目倍率は採用せず、志願傾向を明らかにするため第1希望志願者/募集定員を倍率として用いた。以下同様)と定員を割り込んだ状態になっていることが他の学区と著しく異なった点である。相模原北部学区では学力検査の時点で学区8校中6校が定員を割り込み、残りの2校もわずか1.09倍未満にとどまっている。この学区では、県内外私立高校への進学者の中学卒業者に対する割合は、96年度には21.6%であった。これが97年度には26.1%と4.5ポイントも増加している。新入試制度の導入が唯一の理由かどうかの検証は難しいが、この学区の受検生が公立高校を避けたという事実は歴然としている。
 一方で、川崎南部学区では出願時1.47倍、受検時1.03倍と全体では定員を満たしていたにもかかわらず多くの欠員が生じた。この学区の場合は学校ごとのばらつきが大きい。学力検査日の時点で3校では1.47倍から1.07倍の倍率だったが、残りの3校は受検者が定員を割りこみ、結果として延べ87名の欠員を生じた。定員が割れた原因としては、志願確定後に先に合格が決まる私立高校に入学手続きをした受検生が大量に出て公立高校の受検を取消したことの影響が大きい。この学区では例年この傾向が強かったが、新入試制度の導入により、受検生の出願傾向に変動が生じた結果、例年にない欠員の発生につながったものと思われる。この学区において、他の学校で欠員が生じながらも不合格となった受検生たちは、一部は再募集に望みを繋ぎつつ、全日制高校への希望を満たせずに、別の課程への進学を余儀なくされたものも多かった。定時制高校進学状況(G-19)を見るとこの学区の定時・通信の比率が18学区の中で著しく高い。もっともこの傾向はこの数年続いており、今回の新入試制度の問題というよりは、定時制高校の地域的な設置状況の問題としてとらえるべきかもしれない。



《受検生の動向》
 志願確定後の取消者の数と学区外志願者の数についてp61にグラフを作成した。
 取消率は全体としては微減、増加した学区は18学区中5学区にとどまっている。
 学区外率は普通科全体では第1希望について見るとO.54ポイントの減少、第2希望では1.19ポイントの減少となっている。
 この結果は新入試制度の見えにくさを警戒して慎重になっている受検生の心理を一定程度反映している。受検生の志願傾向は、確実に安全に進学先を決定するという方向に傾斜している。
 新入試制度における、「行ける学校から行きたい学校へ」というスローガンは、学校選択における自己決定を促すと同時に、自己責任のリスクをも併せて受検生に負わせるものである。しかし受検生はそれを明らかに忌避しているという実態がここにあることを、しっかりと受け止めるべきではないだろうか。



2).中学卒業者の進路希望と進路結果
  集計表
   (別表3・4)'96・'97年4月入学生進路希望・進路結果集計表(数値表・比率表)
   (別表5)  '96・'97年公立中学卒業者希望充足状況、
  グラフ
   (G-1〜18)進路希望・進路結果グラフ(学区別)、'92〜'97

 公立中学卒業者希望充足状況(別表5)は、設置者・課程・学科ごとにそれぞれの進学者数の10月段階での希望者数に対する比をまとめたものである。
 この表にある通り'97年度においては全日制高校への進学を希望した生徒のうち、97.7%がその希望を満たしている。しかしその内訳を見ると、公立高校普通科への進学希望者は74.0%しかその希望を果たすことができず、実数にして15,011人が10月時点での希望とは別の学校に進学したことが表されている。
 この状況を'92〜'98年度の7年間についてグラフ化したものが(G-1〜G18)である。

 (注:別表3,4,5,グラフG1〜G18は省略。Web版では県全体のグラフのみ掲載)

*本資料は、「公立中学校卒業予定者の進路希望調査(10/20現在)と「公立中学校卒業者の進路状況調査結果(5/1現在)の1992(平成4)年度から1996(平成8)年度版により作成した。
*各設置者・課程・学年の比率は、希望状況については卒業予定者、進路結果については卒業者総数に対する比である。
*白抜きの折れ線グラフは卒業予定者・卒業者の実数を表す。



 ここでは、進路希望状況においては公立高校希望の比率は相対的に増加の傾向を示しているにもかかわらず、進路結果においては横ばいあるいは減少している状況が明らかになっている。数値で示せば'92年には公立高校普通科の県全体の希望充足率は80.4%であったものが、'96年には74.6%となり、'97年には74.0%を記録するに至る。
 中学卒業者の公立高校離れという結果のみが喧伝されるが、中学生の10月時点での希望を汲み取ることができない制度それ自体が問われなければならないのではないだろうか。

  (注:以下、資料表グラフ等省略。)





第IX期高総検学区入選グループ
秋山崇(長後)
金澤信之(柿生)
川津正巳(柿生)
小山晴美(相模原工技)
中野渡強志(相模台工業・定)
本間正吾(田奈)
三浦真澄(中沢)
溝口一郎(大船・現鎌倉養護)
山崎譲(足柄)
和智匡雄(川崎・定)




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