高総検レポート No 7

1989年11月1日発行

職業教育グループ

 県教委は89年度より6年間ですべての普通高校にコンピュータを設置するとし,初年度に20校の導入をはかりました。私たちは高校教育におけるコンピューターの役割りについて緊急に検討する必要があります。すでに導入されている学校の実態について明らかにします。

コンピュターは高校教育をかえるか!


I コンピュー夕使用状況調査報告
 ※回答数116分会(普通科102,職業科高14)

 1.コンピュータ設置台数・機種

 2.使用目的

  1. 授業  34校
  2. 入選  106校
  3. クラス編成・名簿作成  69校
  4. 成績処理(個人用)  87校
  5. 会計・予算編成  30校
  6. 部活動  26校
  7. 教科の成績処理  72校
  8. 成績一覧表  58校
  9. 進路資料処理  67校
  10. その他(ワープロ,時間割作成)  19校

3.授業での利用状況
(1) 授業実施状況
  ・職業高校
   科目 実習7(分会),情報処理5,製図2,情報技術2,工業基礎2,農業基礎2,数学1,経営数学1
   担当者 実習担当8,理科1,商業5,農業1
  ・普通科高校
   科目 情報基礎1,コンピュータ実習2,情報科学I・II,基礎解析,数学II 2,情報処理I 12,数学I 2,理科1)
   学年 2年6, 3年20
   担当者 数学18,理科1,各教科で適時1
(2) どの科目を減単または無くしたか。
  ・職業高校
   実習,数学,商業経済
  ・普通科高校
   必修は1校のみ,新設校ではカリキュラムに,はじめから設けられている。
(3) どの科目との選択になっているか。
  ・商業科
   文書事務,工業簿記,貿易英語,タイプライティング
  ・普通科
   色々な科目と 9, 文系科目で 2, 職業科目 1, 外国語 1, 自由選択 3,
(4) 授業の目標は
 職業科普通科
a プログラムが作れる。1311
b バソコンに慣れる。1011
c タイピングをマスターする。23
d その他(CAD,文書作成)23

(5) 生徒の評判は,
  良い15, 熱心 4, 興味あり 4, ブログラムはだめ 2, 時間が少い1
  機種が古くなると興味をなくす。
(6) 卒業生の評判は,
 ・職業科 役に立たない1, 役に立つ 1, 内容を深くして 3, 良い1
 ・普通科 良い5(進路にとって良い3), 不明 9
(7) (略)
(8) (略)
(9) 授業実施上の問題点は,
 ・職業科 一人一人に目が届かない2,指導者不足2,教室が狭い2,エアコンがない2,バソコンの数が少ない3,ソフトが多すぎる1
 ・普通科 機械不足7,ソフト不足4,教材の準備が大変2,指導者不足3

4.コンピュータの操作を何人で行なっていますか。
 職業科普通科
授業実施授業なし
1名
2〜4名20
5〜9名29
10名以上1126

5.導入にあたっての研修は。
あり13
なし1766

6.今後,コンピュ―タ教育にはどう対応するか。
a 積極的に15
b やらざるを得ない1116
c 生徒・保護者の要望
d 慎重に29
e 反対


(理由)

  1. ・社会環境がコンピュータ時代で,情報化社会への対応。 7
    ・教具として有用。仕事の効率を上げる。予算がでるのだから。
  2. ・時代の流れ
  1. ・予算がかかりすぎる。コンピュータを利用する方向でなくては。ふりまわされてはダメ。
    ・教科指導として,いかに教え,誰が教えるかが問題。
    ・個人の利用と違い,教育の中にコンピュータを取入れるには問題がある。
    ・コンピュータの位置付けをきちんとしておかないといけない。
    ・各種データの管理,取扱いに不安がある。CAIは効果があるか疑問。
    ・なんのための教育か不明。
    ・職場での意志確認とスタッフの保障が未解決。
    ・教員と生徒間に壁を作りかねない。
    ・コンピュータ学習は非人間的。
    ・本来教員が熟知していなければならない情報などがコンピュータまかせになり指導に支障をきたすことがある。
    ・教育の内容が確立していないし,ソフトもない。
    ・名目が先行して,どういう内容であるかについてが論議されていない。
    ・導入することによって教える側の負担が極端に大きくなる可能性がある。
  2. ・ソフト開発,導入計画がままならぬ現状では生徒を混乱させるだけ。
    ・何をどのように教えるかが流動的である。
    ・ソフト購入予算なしの導入はソフトの違法コピーを助長する。

7. コンピュ―タが職員室に入ることの功罪
 ・仕事が一部の人に片寄る。 34分会
 ・仕事量の軽減,事務処理がスムーズになった。 33分会
 ・負担増  3分会
 ・資料文書の共有化  2分会
 ・ムダな書類が作られる。
 ・データ管理が未完成  4分会
 ・管理的になる     2分会
 ・必要のない情報管理をする。 1分会
 ・消耗品代がかかり過ぎる。  1分会

II 学校とコンピュ-タの関係

文部省「学習指導とコンピュータ」から

 各分野において,既に幾つかの実践研究がおこなわれています。それらは一致してソフトの開発に大変な時間と労力がかかる,ハードとソフトに費用がかなりかかる,コンピュータを扱える人に負担がかかることを問題点としている。
 コンピュータを導入する場合に,使用目的とその内容を明確にとらえていないと,コンピュータを使うため授業や仕事内容を変えるという本末転倒の事態をも招きかねない。
 また,VDT障害やテクノストレスの問題とデータ管理についても今後はもっと大きな問題となるだろう。安易な導入は禍根となる可能性も高い。