高総検レポート No 12

1992年4月25日発行

コミュニティ・スクール実態調査報告

実施 1991年7月12日
高総検職業教育グループ

担当者の負担大  問題点の多いコミュニティ・スクール

 学期末の多忙な時期に各分会には協力を頂きありがとうございました。結果の分析と考察等に時間がかかり、報告が遅れたことをお詫び致します。

 回収数 69

I.現在、コミュニティースクールを開催していない分会に回答をお願いします。  29分会

  1. コミュニティースクールを開設していない理由は。
    1. 前年度以前は開催していたが止めた。  6
    2. 開催しない理由はとくにない。     10
    3. 多忙のために開催したくともできない。 3
    4. 校内で開催する希望がでない。     9
    5. その他                1
  2. 1でaと答えた方のみ回答してください。止めた理由は。
    1. 担当者の負担が大きすぎた。  2
    2. 受講希望者が少ない又はいない。 0
    3. 担当者の転勤等の理由による。  1
    4. その他(全日制との隔年のため、間に休みを入れた、開講希望者がいない)
  3. 将来、開催(もしくは再開)の予定は。
    1. あり5 その理由と内容は(管理職の意向、希望者が出れば、地域の要望から)
    2. ない15 不明 1 無回答 12

II.コミュニティースクールを開催している分会  40

  1. 開催している理由は。
    1. 管理職からの依頼等の理由。        9  ※abにOが3あり
    2. 開催を希望する人が出て担当者となったから。13
    3. 学校として開催することを決定した。    7
    4. その他6(各科で対応、定着している3、必要性があるので、地域からの要望)
  2. 運営のために校内組織を開設していますか。
    1. 委員会組織をつくっている。   33
    2. 担当者と事務職のみで対応している。1
    3. 担当者が個人的に対応している。  4
    4. その他    2
  3. 2でaと回答した分会のみ回答してください。委員会の構成メンバーは。
    1. 担当教員、管理職、事務、地域からの代表等外部から28  ※外部からには市、区役所社会教育課、PTA
    2. 担当教員、管理職、事務             2
    3. 担当教員、管理職               0
    4. 教員(担当者とそれ以外)、管理職        1
    5. その他の構成                 1
  4. コミュニティ・スクールの開催は担当者にとって負担か。
    1. はい24(時間が取られる、多忙、事務手続きが面倒、気使いする、土日を使うので)
    2. いいえ11(やり甲斐がある、希望したから、勉強になる)
      ab両面在り2不明3
  5. 開催して良い点は。複数回答可
    1. 学校と地域との交流ができた。   21
    2. 受講者に好評だから。       24
    3. 担当者にとってやりがいがある。  12
    4. 県からの予算が下りて助かる。    6
    5. その他(担当者の勉強になった)  回答無し3
  6. 開催して悪かった点は。複数回答可
    1. 外部の人が学校に入ることで問題が起きる。0
    2. 受講者に不評である。        0
    3. 担当者にとって負担が大きい。    21
    4. 予算を使い過ぎる。         0
    5. その他(決定の仕方に問題あり、施設が不十分、テーマが難しい)
      ・悪かった点なし10  ・回答無し4
  7. 今後については。
    1. 開催を続ける。11
    2. やめたい6(今の設備では効果が無い、担当する希望者が出ない)
    3. 担当者がいる限りは続ける。10
    4. 先のことはわからない。  10(生涯教育課がうるさい、個人の意思でやっている)
      ・回答無し2
  8. 県立高校が生涯学習に対応することについて。
    1. 良いことなので積極的に対応したほうが良い。19(要望があるので)
    2. 状況からして応じなくてはならない。6(地域に学校を根付かせる)
    3. 消極的だが応じる。       6(負担が大きすぎる)
    4. 対応すべきでない。       4(高校教育の解体に手をかすことになる。負担が大きすぎる、臨教審路線にとりこまれる)
    5. その他(必要と状況に応じて開催すれば良い。高校の在り方をどう変えるかという視点なしでは論じられない。)

    賛否が分かれる現場の意見

  9. コミュニティ・スクールやリカレント学習など生涯学習について意見があれば。
まとめと考察
 アンケートから判る範囲では、開催している分会の多くは担当者の負担にはなるがそれなりの良い点があるとしている。強い反対は少数で条件整備が整えば賛成とする意見が多い。その理由は高校で生涯教育を行うことに必然性があるからではなく現状の地域からの要望に応ずるとのことだ。
 現状のコミュニティスクールは設置の理念、あり方からして国民の教育権を保障するというよりは地域住民の余暇の過ごし方の一つに近いと見られる。しかしそこで反対することは地域との交流の場の一つを自分達で潰す事になる。また開催している分会の多くは負担としながらも意味があるとしている。こうした現状からコミュニュティースクールを高校で開催することを全面的に否定することは困難だろう。
 こうしたことから当面、コミュニティスクールについては予算措置の充実を図ることを当局に要求する。各分会での対応は校内の受入れ態勢を管理職、事務と担当者に任せず、学校全体で委員会組織を作り担当者の負担軽減を図る。発生する問題を学校全体で解決するといったことが考えられる。
 根本的な問題として高校を文部省臨教審流生涯学習のなかに位置付けるならば入選の方法、学区、職業教育など高校の性格まで全般を変更することになる。文部省流の生涯学習を無批判に引き受けることは知らず知らずに学校の在り方を権力側の都合で変えられ易くなることに繋がる。例えば予算・設備の管理面、教員の異動、勤務形態などに生涯学習のためと言った名目での管理が入り込むことが可能になる心配がある。もしも担当者がコミュニュティ・スクールの時間分の手当てを給与と別に受け取るようならば負担増は当然のことになり、本来の業務がおろそかになりやすくなる。こうしたことからコミュニュティ・スクールについての条件整備・予算増には一定度の慎重な対応が必要である。また、ポランティアでやることを強調すればその場での事故等の責任を学校の担当者が負うことになりかねない。
 昨年度から三校で始まったリカレント型の生涯学習は実質的に大幅な学校の性格変更につながる道を作ることになりかねない。それは一つの課程をつくり、これまでの生徒とは違ったタイプの生徒が入学することと同じであり、現在の高校教育とは全く異なった目的の教育を行うことになるからだ。現在の段階では、リカレント型のコミュニュティ・スクールの実施については相当慎重に対応すべきだろう。