学校教育が抱える諸問題を検討するに当たり,その諸問題をもたらしている要因として,学歴主義の成立と受験競争の激化,教育における平等と効率の問題を取り上げ,わが国の歴史や国民の意識にまで遡って考察した。 |
高校教育の改革に関する具体的な提言を行うとともに,これからの改革が十分な効果を上げるよう,受験競争を緩和するための今後の方向を示した。また,高等教育との接続という観点から,大学における教育研究の在り方について述ぺている。 |
今後の生涯学習社会の実現に向けて学校に期待される役割や具体的施策を示すとともに,生涯学習の成果を適切に評価する仕組みの拡充などの方策について提言している。 |
さて,日々,生徒に接している私たち教職員は,次から次に生じる眼前の問題に目が奪われ,その問題の生じる根本的な原因をじっくりと見据えることができないでいます。懸命に問題を解決しようとする私たちの毎日の努力にもかかわらず,問題は,なかなか解決されません。それは決して,私たちの力量不足でも,生徒や生徒の保護者の責任でもありません。私たちが眼前の解決困難な問題にとらわれざるを得ない状況をじっくりと見据えるならば,その状況は,ある大きな意図と策動によらて生じていることが理解できる筈です。これから展開される高総検の「中教審答申批判」によって,そうした点も浮き彫りにされる筈です。
「高校教育改革」の観点 | (1)学校間格差 (2)条件整備 (3)入試制度 (4)進路 (5)教員管理 (6)学科の創設 |
「生涯学習」の観点 | (7)中途退学者 (8)教員管理 (9)生涯学習での評価 (10)学校利用 |
学校間の「格差」あるいは「序列」は…中略…国民の多くに抑圧感情と閉塞感情を与えている,日本の教育の病理のいわば最大の問題点である。…中略…しかし別の角度から見れば,学校間「格差」ないし「序列」は,大量の高校生や大学生に高校卒,大学卒という同一資格を与えてその平等ヘの欲求を満足させ,他方,学力別に区分けしたグループごとに適切な教育を与えるというかたちで効率性の維持にも役立っている,見方によれば便利なシステムだとも言えるのである。 |
日本の教育の命運は,学校や文部省や中央教育審議会の手の中に握られているのでは必ずしもない。例えば,わが子の進学に目の色を変え,外見の良い,収入の良い職業人に仕立て上げることのほかは深く考えようとしないタイプの親がどれくらい多いか,また,採用にあたって学歴を重視し,個性や癖の少ない均質な労働者を求めることのほかは深く考えようとしない企業がどれくらい多いかそれによって左右されているのである。 また別の項では, 高校進学率95%,4年制大学の数500校以上という現実をよく考えてみていただきたい。本当に勉強したいから進学するのではもはやあるまい。他人と同じような資格を得たいがために競争するという人並意識に駆り立てられている傾向はここでも強く…… あるいは, 高校教育の一番基本的な問題は,もう言い古されたことではあるが,その画一性にある。まず,高等学校への進学率が急上昇したにもかかわらず,高等学校が自らその現実の変化に十分対応するだけの変容を遂げていない。 |
時代の転換期に差し掛かっているわれわれは,「平等」や「効率」の概念そのものをここで大きく変えるという,発想の思い切った転換を求められているように思える。 |
(高総検レポート14-2へ続く)