高総検レポート No 47
2000年9月1日発行
新神奈川方式入試4年目の検証
「抜本的な見直しを!」
2000年度 入選に関するアンケート(集計)
文部省の「新しい多様化」路線に沿って策定・実施された「新神奈川方式」入試制度が4年目に入りました。今年度も、私たち高総検は全分会を対象に「入試に関するアンケート」を行い、120校から回答をお寄せ頂きました。(ご協力ありがとうございました。)
アンケート集計結果から
今回のアンケート集計結果で、4回目を迎えた現行の入試制度の問題点が、いくつも浮かび上がってきました。回答全体を通して、現行制度に対して否定的な意見がほとんどでした。それらの問題点は、「新しい多様化」の「選抜方法の多様化・受験機会の複数化・評価尺度の多元化」という考え方に応じて採用された、現行の入試制度自体から生じています。
入試期間の長期化と入試業務の過密・過重化
この制度の複雑な内容が、入試期間を長期化させ入試業務を過密・過重なものにしているという指摘が多数ありました。
その第一の要因に挙げられているのが、この制度の目玉とされる「複数志願制」です。「複数志願」とは言いながら、受験生にとって実際の受験機会は1回きり。それにもかかわらず、入選業務は2回分になってしまいます。そのため、入試にかかわる期間が長くなって、入試データの送受信や判定会議資料作成などの業務が複雑になり、仕事量が倍加しています。いきおい、授業などの通常の勤務にも支障をきたし、それと並行して行わねばならない入試業務に、ミスが生じる可能性も高くなります。
その上、さらに推薦入試が加われば、入試業務がいっそう複雑化・長期化・過密化・過重化していきます。受検から合格発表までの長期化は、受検生の不安をますます高める原因にもなっています。
その他、採点ミスなどの問題を解決するために、マークシート方式を採用したらどうかという提案が多くありました。
入試支援システム
「入試支援システム」の根本的問題は、現場がパソコン(表計算ソフト)を自在に使えるということを前提にしている、という点でしょう。
仮にパソコンが使えるとしても、そのマニュアルが不親切で使い難いということは、まず指摘しておかなければなりません。
もうひとつの問題は、現在各校に配置されているパソコンのハード・ソフトが、あまりにも古いため、一度に数百人分のデータを処理するのには容量不足だということ。しかも、ほとんどの学校には1台しかパソコンがありません。そのパソコンも老朽化しているため、「2年間で5回ハングアップ」「システムのバグ」「HDDがクラッシュ」など、たびたび故障が起きています。これらの問題に関して、県教委は何ら有効な対応をしていません。
選抜のむずかしさ−推薦入試と総合的選抜
「推薦入試」「総合的選考」については、この方式の趣旨である「点数によらない選抜」を行うことの曖昧さ・難しさなどが、根本的問題点として挙げられています。
この二つの制度は、中学生の間によい評価の獲得をめぐる「よい子」競争を激しくさせる要素が含まれており、中学生活のすべてを抑圧する元になっています。
そもそも人格や性格をどう評価し点数化するのか。自主的・自治的活動であるはずの特別活動をどう評価するのか。県教委は「点数化するな」というが、学力検査は数値化されており、その他の評価とどうバランスをとったらいいのか。数値化しないとすると、評価基準が不明確になり、また、中学校の調査書の書き方、その巧拙によって、高校側の評価に違いが出てしまう可能性も出てきます。面接評価は、面接者による差が大きく出てしまいます。
「点数によらない選抜」は、総じて、合格基準を曖昧にし、選抜自体を不透明なものにしています。各校の「特色」にあった選抜に特に効果があるとも思えません。それが、中学校の進路指導の混乱の要因の一つにもなっています。
Q1.「複数志願制」をどのように思いますか。
- 入選業務が複雑(長期化)になっただけ。(ミスがおきる可能性が高まった)
- 生徒・保護者に混乱をもたらしただけ。(受検生にとって利があるのか)
- 受検機会の複数化が図られているわけではなく、形式的にやっているにすぎない。
- 第2希望で入学した子の多くが、現実には不本意入学である。
- 中学側の進路指導を混乱させる。
- 上位校からよい生徒がまわってくる。
- 入試が不透明なものになっている。特色づくりに矛盾するのでは。(入りたい学校は2ついらない)
- 高校間格差が,より明確になったように思う。
- ボーダーの生徒が下位の学校に入れる。
- 第2希望で合格した生徒が,入学辞退したことを考えると賛成できない。
- この制度に固執するのであれば,学力検査を2回実施したほうがよい。
Q2.「総合的選考」について、感じている問題点・疑問点をお聞かせ下さい。
- 人格を得点化するのは、無理がある。
- 特色づくりにはよいが、県立高校に特色は必要なのか。
- 情報公開できない、曖昧な基準はやめるべき。
- 項目を設定するにあたり、当該校の自主性が必ずしも尊重されていない。
- 調査書の内容で左右されてしまい問題がある。(中学の担任の書き方による)
- 合否判定をするときの整合性がなくなってしまう。
- 総合的選考の枠が大きすぎて、C点がよくても不合格となる子がいる。
- 特別活動を評価、順位付けするのはむずかしい。
- 受検生にとって有益とは思えない。入試は、simple is best.
- 比較的おとなしい子がとれるので,よい選考である。
- 「偏り,不公平がある選考」ということを,県は県民に納得してもらってからやるべき。
- とりたい生徒に有利にすることでは,公平性が保たれていない。
- 県教委は,この制度について高校に対してあまりにも無責任である。
- 合格基準を多様化しても,格差は改善されていない。
- 特色を求めるのであれば,県教委は全員を総合的選考で選抜する方向を出すべき。
- 学力のみで選考しても大差はない。
Q3.入選の日程について,問題点をお聞かせください。
- 日程が過密すぎる。時間的余裕がほしい。
- 定時制の入試と全日制の二次の日程が重なるのは問題がある。
- 3学期の在校生への対応が,満足にできない。
- 学力検査から第2希望判定まで期間が短すぎる。ミスの許されない作業でありながらミスを誘発するシステムになっている。
- 日程短縮も含めて,複数志願制を見直すべき。
- 推薦制を入れられるような日程ではない。
- マークシート方式にして,採点は「高校入試センター」に一任し,高校は調査書の読み取りなどに専念したい。
- 日程の設定に問題が多かった。(土曜の午後,日曜の時間外勤務は当然。データ受信したその日に原案作りをしなければならない。)
- 授業に支障が出るので,教員が業務をしないですむ方法を考えるべき。
- 検査から発表までの期間が長すぎ、受検生を不安にさせている。入試を単純化すべき。
Q4.採点業務にかかわって,何か不都合な点はありますか。
- マークシート方式を考えたほうがよい。(複数の高校で同じ採点結果を使う。ミスをなくすため。)
- マークシート方式にし,県教委が全高校分を一括でやればよい。
- 毎年のように採点基準の変更があり,混乱している。
- 採点がしにくい設問と配点になっている。1点と2点の違いも不明確。
- 採点ミスで個人名まで特定されるなら,日程・環境整備を県はきちんとやるべき。
- 毎年のように採点後に訂正がくるのは県教委の怠慢。間違いをなくせ。
- ミスを少なくするには,採点日・点検日と2日取るしかない。
Q5.入選支援システム(パソコン業務)で,何か不都合はありましたか。
- 操作に制約が多く扱いづらい。
- このシステムを続けるのならば,PCの更新・台数の増加が必要。
- 初めての人が理解するのに苦労するシステム。(マニュアルが不親切)
- 担当者の負担が大きすぎる。授業時間外に業務できるような工夫を。(授業が犠牲になっている)
- 第2希望のデータだけをシステムで送受信すればいいのではないか。
- PCが2年間で5回もハングアップした。しかも1回は通信中。
- HDDが業務途中でクラッシュした。
- システムのバグがあった。
- ソフト(ロータスR5J)が古すぎる。
- システムの問題点を指摘し,文書を提出したが県からは何の回答もない。
- 昨年,PCが動かなくなり,県に交換を要求したが調査もなしに、使用方法・管理の悪さと決め付けられた。
- システムがDOS版というのはあまりにも時代遅れ。
Q6.現在の推薦入試の問題点は何ですか。
- 特別活動など数字以外の部分を,どのように評価するかが難しい。
- 専門性のある試験をして合格者を決めたい。
- 特色の沿った志願者が,集まっているとは言い難い。
- 受検者が多く,授業をやりながらではキツイ。(16時に集合の受検生が出てくる可能性がある)
- 入選業務が2倍以上になったように思う。
- 入試テクニックとして利用されている。(本人の志望・適性に関係なく応募してくる)
- 複数の人間による面接評価の違い,部屋別の面接評価の調整ができない。
- 「受験のチャンスを増やす」との名目のもと,15の春を泣かせている。
- 実習中のため人手が足りない。願書受付日は,事務は昼食も取れない。
- 推薦枠を学校独自で決められるようにしてほしい。
- 入選にかかわる時期が,約1ヶ月前倒しになっている。
Q7.普通科への推薦制導入について、どのように思いますか。
- 入選業務がこれ以上増えると,学年末の業務に支障が出る。
- 特色のでにくい普通科では,推薦でも一般でも入学する生徒は変わらない。
- 複数志願制をやめて,推薦制を導入するほうが入試の改善になると思う。
- 合否基準が不明確になると思う。
- よい子競争に拍車がかかってしまう。
- 学力で合否を決めるようでは推薦の意味がない。
- 中学でまじめに勉強した子には,便宜を図ってもいいのでは。
- 人間を「評価」することにもっと謙虚であるべき。(教員ができるのはせいぜい学力だけ)
- 推薦で合格する子は,一般でも合格すると思うので、入試を増やす必要はない。
- 中学生が受験する機会が増える。よりよい選抜ができると思う。
- 青田刈りになり,中学生の内面的な競争を増やすだけ。