高総検レポート No 48

2000年9月20日発行

普通科推薦のもたらすもの

【第49次日教組教育研究全国集会(00/1/22〜25・石川)報告】

 県教委は、6月29日に開催した県教育委員会において、2001年度高校入試における、普通科一般への推薦入学の導入と学区枠8%の25%への拡大を決定し、翌30日の午後記者発表しました。来年度については、再編該当校をはじめとして18校が導入を決定しています。
 神高教は、普通科一般への推薦導入による全校への推薦制度導入について、(1)複数志願制と相まって、中高ともに入選業務の長期化・多忙化を生む、(2)総合的選考と屋上屋を重ねる、等の問題点を指摘し、教育改革問題検討会の中の課題検討会(神高教・神教組)を中心に協議を重ねてきました。神高教は、導入にあたって県教委との間で今後の課題・問題点等について文書整理を行い(6月30日付FAX速報)、入選制度の抜本的改善を求めて県教委と協議することしています。
 私たち神高教は、本年1月の中央委員会で、導入反対の方針を確認しています。今後、普通科一般への推薦制の導入が迫られる中で、問題点の整理をしつつ、各職場での議論を高めていく資料として、本年1月の日教組全国教研・第20分科会(第2小分科会)「選抜制度と進路保障」で行われた議論を紹介します。この分科会では、学区自由化(拡大)とともに、普通科推薦が討議の中心となりました。推薦制が導入されている各県からの報告とそれについての論議が活発に行われましたので、その内容を報告する事で、この問題の本質を明らかにしてみたいと考えます。

(1)石川県教職員組合のレポートより <<推薦入試に関するアンケート調査>>

(2)鹿児島県教職員組合のレポートより <<高校全入の視点から>>

(3)福島県教職員組合のレポートより <<小中高懇談会の話題より>>

(4)福岡県教職員組合のレポートより <<三池支部進路対策委員会報告の検討>>

(5)長崎県教職員組合のレポートより <<インターハイ強化策のための推薦入学制度>>

レポートに関する質疑・討論より

<<エリート校化・学校間格差・適格者主義の問題>>

【鹿児島】 (日置地区では)普通科推薦において、受検生の有名校集中という状況は生じていない。学区が存在するためである。しかし、鹿児島市内においては、その傾向が生じている。高校序列化・学校間格差拡大にシフトしている。
【広島高】 受験機会の複数化は、すなわち格差拡大である。推薦制度を入れるならば、進路保障のための推薦=障害者も見据えた全入を目指すものでなくてはならない。広島の選抜T(偏差値によらない選抜)は、学区を越えるために長時間通学が生じるという問題を生み出している。何を視点とした改革かを見据えるべきである。
【千葉】 中学にも高校にも、「こんな生徒が推薦か」という意識があり、新たな適格者主義を生み出している。中学内の推薦委の存在が問題である。

<<内面を問う選考であることの問題>>

【石川】 推薦制の問題点は、総合的選考と同じく、生徒の内面を問う選考であること。その意味で、安易に推薦をせず、推薦の内容について縛りをかける必要があるとの職場意識がある。中学推薦委では、実業高校には内申点で、普通科には全員推薦という方向でいる。普通科・総合学科への推薦は必要ないという意見が、大勢を占めている。
【東京高】 推薦制度は、「青田刈り」がまず先にあり、高校生き残り競争にシフトするものである。それが、生徒の内面までの監視となる。「生きる力」の数値化・序列化は、ナンセンスである。

<<特色・多様化の問題>>

【石川高】 推薦制の問題は、「特色」の問題と連動している。特色・多様化路線からの脱却が必要である。
【広島高】 県教委は、高校の「特色」「個性化」を迫っているが、その真意は、エリート校の復活である。エリート校にのみエリート校としての「特色」があり、他は、輪切りというのが現実である。学校選択の自由などはない。
 学力・施設・設備にリンクした、学校間の「特色」競争が生じている。「学校説明会」は、動員競争・宣伝競争となっている。
【兵庫】 今行なわれている「選択の自由」は選択の押しつけである。高校の数だけ特色化・個性化する必要があるのかが疑問。目的意識のはっきりした生徒には、「特色」で進学指導をしてもよいが、決め切れていない大多数の生徒には、中学教員の支援が必要である。
【東京】 推薦制度は、多様化促進を意図している。新タイプ校の中退率は下がっていない。日教組が、こうした問題点を明らかにしないのは、問題である。
【共同研究者A】 特色・多様化が、選択の幅が広がることによって、逆に輪切りにシフトをしてしまうのは、輪切りを下支えする意識があるからだ。子どもの中に「いい学校」「悪い学校」という意識が位置付いてしまっている。そもそも人は学校で何を学ぶのか、という根本からの問いかけが必要。その意味で、進学校の問題をもっと論議すべきである。

<<特別活動の推薦要件の問題>>

【福島】 トップの進学校では、評定平均4.8の生徒が落とされる。5.0でないと、生徒会長をやっていてもダメである。トップの進学校では、全ての受験生が生徒会・スポーツ等の要件を持っている。推薦制度も結局評定平均であって、他の要件はボーダーでしか使われない。
【長崎】 推薦制度を、地域推薦制度のような、全ての子どもに進路保障をするような形に改めることは不可能である。純粋な推薦制度にシフトせず、インターハイがからんできてしまうことが問題である。

<<推薦制度への対応>>

【共同研究者B】 推薦制度の弊害は、中学が主導権を握っていた入試が、入試改革によって、高校に主導権が移ったことに起因する。「行ける学校」から「行きたい学校」へとは、言い換えれば、高校がとりたい生徒をとるということである。つまり、常に、主役は子どもではなく学校であり、内申書に縛られる形は変わらない。
 推薦という言葉にある「優秀な生徒を選ぶ」というニュアンスから脱却すべき。学校間格差の構造を下支えする適格者主義が我々の中にあり、それが、推薦制度とマッチしているのが一番の問題。それをどう反転させるかが課題であり、反転させ得れば、推薦制度の弊害も克服できる。
 中学から高校へ、地元優先などの、推薦基準に対する要求ができないだろうか。
【共同研究者C】 推薦制度に問題があるのは分かるが、学力検査以外の選抜方法である点に可能性がある。希望者全入の実現には、運動に希望をつなぐより他はない。推薦制度全般には反対だが、地元優先などの入れていく工夫をする余地はある。
【障害者保護者】 入試制度の全てに反対だが、現実問題として、利用できるものは全て利用したい。地域推薦制度を確立して、適格者主義にシフトした推薦制度を形骸化することができるのではないか。

 推薦制の弊害克服に関して、小分科会の討議では、地元優先を推薦基準とする地域推薦制度確立の他に方策が提示されませんでした。しかし、長崎からなされたように、「推薦制度を、地域推薦制度のような、全ての子どもに進路保障をするような形に改めることは不可能である。」という指摘もあります。
 推薦制度への対応については、各現場の十分な検討が必要です。が、矢継ぎ早に各校意向調査などを迫る県教委の姿勢は、その時間を保障していません。教育改革が、真実子どものスタンスに立つものであるならば、この現場の余裕のなさは、きわめて不合理と言わざるを得ません。