高総検レポート No 61

2002年7月12日発行

「県民フォーラム これからの入学者選抜制度を考える」の会場より

入学者選抜制度・学区検討協議会中間まとめ「入学者選抜制度の改善と今後の学区のあり方について」に寄せられた意見

学区入選グループ

 2002年3月に発表された入学者選抜制度・学区検討協議会の中間まとめ「入学者選抜制度の改善と今後の学区のあり方について」を受けて、県民の声を聞くための公聴会(県民フォーラム)が開催された。日時会場は、5/25(土):平塚商工会議所ホール、6/1(土):厚木ヤングコミュニテイセンター、6/8(土):桜木町横浜市社会福祉センター・ホールの3会場で、各日とも1時30分から3時30分の2時間と短かい時間だった。ホールが満員となった各会場での発言を紹介し、どんな意見が述べられたのか、またそこにどんな願いが込められているのかを追ってみたい。今回は分析と言うより、なるべく多くを、そのまま掲載する方針をとった。
 当日の流れは、はじめに協議会の役員より、「中間まとめ」の簡単な解説が行われ、前半が2時位から入選制度改革、後半3時から30分程度、学区入選の話題に移って、参加者から意見を募った。各会場とも、中学生、高校生の各1名ずつから発言があった。後は県民、保護者、中高教員、塾経営者、議員など様々であった。
 話題としては、入試選抜制度と学区の今回のまとめに対してのものだったはずだが、他に、絶対評価と入試の関係について、中学校の現場から不安の声が多数あがり、県教委が何度か答弁にまわった。現場にまで、なかなかこの問題が浸透していない点、それが保護者にも不安を与えていることが浮き彫りにされた。今回の入学者選抜制度と学区に対する中間まとめに対する意見聴取ということではあったが、次々になされる改革の波に必ずしも、保護者も現場も、県教委すらも乗り切れていない様子がうかがえた。
 学区については、学区拡大に反対する意見が多く、会長が、学区拡大賛成の意見表明はないのかと発言を促したが意見がでてこなかったのが、印象的だった。
 学区問題で、協議会は学校関係に6/28締め切りで、「今後の学区のあり方に係わるアンケート」を提出依頼している。高等学校は2名で、校長あるいは教頭、と教務関係あるいは入選担当を対象としている。中学校では同様に各2名、他に中学生徒1600名程度、保護者1600名程度、教育関係者400名程度を対象にしている。今回の会場であまりに学区拡大の賛同意見がでなかった点を補う目的も有るのだろうが、学区のプラス・マイナスをあげずに記入させていく中でどこまできちんとした意見が集まるのか、また会場でも要望があったが、フォーラムの意見が全然反映されないような形で最終報告がでることが無いように、注目したいところだ。

入選制度について

県民フォーラム平塚会場

【学区内高校生】 自己推薦なら行きたいところに行ける。点数より作文の方がその生徒のことが良く分かると思う。自分で意見を伝えることが大切になると思う。
【高校生保護者】 チャンスを増やす、負担を減らすということを言いたい。学力検査を伴わない入試は、チャンスを増やすということなので賛成。受検生、保護者の負担が減る。同一の学力検査をしないのなら受検日を変えたらどうか。総合的学習や選択授業の内容を調査書にいれて判定の資料にするのは負担が増えるので反対。総合的学習は中学校による差が激しい、文書記載がどう評価されるのか。意欲関心をどう公平に評価するのか。学校生活のほとんどが内申に関係するのは負担が増える。
【中学校教員】 これまでは複数志願制で90%が同一校志願、機能していなかった。日程が長期化し、中学校に影響が大きかった。推薦は学校現場への負担が大きかった。今回は現3年のことが忘れられているのではないか。他県では早くから公表、また経過措置がとられているのになぜ神奈川が遅いのか。また、推薦入試の選抜基準を明確にして欲しい。中間まとめでは絶対評価が活用されるので特性が生かされるよう扱いを工夫するとしてあるが、どのように工夫するのか。中学校では公平性客観性を期すとしてあるが、これは絶対評価の趣旨に反する。中学校間格差もある。中学生保護者から多くの苦情が寄せられている。
●県教委答弁【義務教育課】 調査書の公平性信頼性客観性について。生きる力という観点から、いままで結果を評価していたが、過程を取り入れる。ここに、どう公平性、客観性を入れていくということだが、指導要領にある、おおむね満足、というのが基準になる。充分満足とか努力を要するということの基準がどうだということ、県の方で基準をつくっていてもうすぐ届くと思う。
●県教委答弁【高校教育課】 なぜ遅れているかだが、この中間まとめをいただいてから出すものなので、公式発表は6月になってしまう。基準の事前公表だが、11月中には公表できるよう整理している。
【保護者】 去年まで相対評価、今年は絶対評価になるそうだ。これを同一に扱うということだが同一には扱えないのではないか。また、基準の明確化は良いが、各高校でばらばらに設定された基準と中学の基準とあって、合わせるのは難しいのではないか。11月に基準発表では、ほとんど終わった頃に出るようなものではないか。
●県教委答弁【高校教育課】 中学校生活全般に渡っての評価を取り入れるべきだと考えている。高校でばらばらということだが、各高校は特色をもって選考の基準を作っているので、それぞれの基準を持つのは当然だ。
【中学校教員】 今春の入試。推薦で2倍を超え、一般が1.57倍。定時制まで入れてもこの倍率の高さは問題だ。自分のクラスでも進学を諦めた者がいた。計画進学率が低い、開門率を上げるべきだ。また、新しい入試で、推薦の基準がわかりづらい。子供達にも分かりやすいものに。また、絶対評価については、信頼性公平性を保つためにもっとやらないと。今の3年生は相対と絶対が混ざるが、これを従来通りに数値を出すのは意味があるのか。
【元中学校教員】 こういうところに出て来にくい保護者の意見をいろいろ聞いてきた。入試では、高校毎に基準が色々ではむしろ分かりにくい入試になってしまう。また、学力抜きで選ばれる人、学力で選ばれる人、いろいろあると、全面発達を目指す義務教育の目標と合わないと思うがどうか。新しい方法では、大量に不合格を出してその子たちがまた次の入試を受けるという、思春期の揺れやすい子供にとっていい方法なのだろうか?定時制の大量不合格が出ているが、同時日程は問題だ。希望する子供達がいるのだから、開門率計画進学率を上げる方策を。
【中学生保護者】 まず始めに選抜制度ありき、で議論しているが、選抜しない制度をつくってほしい。中学校から地域の高校へ進めるような。大学へ行きたいのならばコミュニティカレッジのようなものをつくってそこへ行って、でも出る、出ないはそのひとに任されるというような。選抜無しで、みな入れる制度を作って欲しい。
【中学校教員】 絶対評価に取り組んでいるが、戸惑いもある。個人的には、自分の教えている生徒に1や2をつけなくてはならないということがなくなるので良いのだが、しかし、これが入試に使われるとなると、あの先生は甘いとか厳しいとか出てくるだろう。それで、こうしましょうとか工夫していくと、最終的には、相対評価とあまり変わらなくなってしまうと思う。絶対評価は自分が教えた生徒に自分が出すものであって、選抜でつかうものではない。戸惑いがある、慣れていない。今年の3年については混乱するのかなあと。数学的にどんな意味があるのか。絶対評価に客観性を持たせるのならば中間にクッションが要る。(会場拍手)
【中学校教員】 1.選抜日程の繰り下げと短縮化。今の3年は最後の通信制まで9回の入試がある。授業の時間を確保、落ち着いた中学生活を送れるように。神奈川は一番早い入試だ。2.推薦について。私立の進路相談12月、これがネックになっている。3.選抜日程、現制度はわかりにくい。基準も事前公表でスパッと分かるようにして欲しい。全部の学校がバラバラになっていくともっと分かりにくくなっていく。分かる学校作りを。4.学力検査を伴う入試では絶対評価の使い方が難しいが、そう言っていると入試だけになってしまう、それは避けたい。5.科目の弾力化というが、しっかり5教科受けさせて欲しい。どうしてもというなら傾斜配点を。独自入試でバラバラの問題を出されては中学校は対応できない。6.絶対評価が入ってくると、今までの「読み」がしにくくなる。そうすると家庭では模試や塾と経済的にも負担が増す。各校では生徒が自分で選べる説明会等してほしい。
【中学校教員】 私立へ進んだ卒業生が、卒業後成績を見せに来る。あれは絶対評価だろう、高い数字だ。生徒は生き生きとしている、あれは絶対評価の良さなのだろう。絶対評価はそれぞれの学校に任されて良いのだ。それを選抜の数値としてつかってはいけないと思う。それから、推薦で決まる生徒は早く決まる。その一月あとに公立の受検がある。推薦で決まる生徒が半分を超えてくると、どう指導すれば良いか。
【中学校教員】 公立の特色は、言ってみれば輪切りだ。絶対評価は、基準に合格すれば○、しなければ×だが、各高校の出してくる基準が、これを超えれば良いというのが絶対評価の基準であったら定員があってはいけない。定員があるのなら相対評価の方が理にかなっている。開門率とか、卒業生のこれだけを高校生にしようと計画するのはおかしい。この後、学力検査の方が高くなり、内申が低くなるという事になったら、ここに書いてあることと反するのではないか。
【中学生徒】 はっきり言って入試が不安だ。絶対評価は個人個人を見ていてくれていいけれど、それを入試に入れるのはおかしい。それぞれの学校の先生によって評価の仕方がちょっと違うのと思う、それだと入試のときに差が出てくる。今までの相対評価と一緒にしてやるのはあまり嬉しくない…(場内笑)塾とかでも、いろんな検定とかも受けとけと言われるし、あせっている。
【中学校PTA役員】 いままで相対評価だったので学区内の位置がわかったから学区外へも志願できたが絶対評価になったら分からなくなる、できればATも復活して欲しいという声もある(場内笑、拍手)また高校で中学校を見て絶対評価の評価に差を付けるのか。制度変更の狭間にある子供に不利益にならないようにしてもらいたい。
【高校教員】 現行、問題点がいろいろある。第2希望の倍率など読めない。推薦で入ってくる生徒は目的意識があって、進路指導などにすぐ入っていけるということはある。複数の機会はあった方がいいが、特に何かなくてもこつこつやっていた生徒には、学力検査での入試も大切だ。

県民フォーラム厚木会場

【中学生保護者】 絶対評価を選抜の材料に使うのはやめてほしい。どういう先生の、どのようなテストで評価されるかで、評価が変わってしまう。
【中学校教員】 いつの入試からどのように絡んでくるのか、現場はそれが一番心配だが、そうした情報が現場にはまったく伝わって来ない。
【県民・進学塾経営】 15歳がひとりひとりで主体的に選択していくのは難しい。自らの主体的な進路希望という言い方は親の教育権の放棄だ。文言をなおした方がいい。広く薄く機会平等でやってもらいたい。基本的には委員の原案に異論があるわけではない。
【高校教員】 複数志願制がなくなるのはよい。煩雑さとミスが無くなる。しかし、これだけ中学生が減少しているのに、入学者を選抜するということにしがみついており、選抜の大枠を維持したままの制度いじりの感が強い。それよりは、計画進学率や公立高校の開門率の改善が緊急の課題である。今年の入学者選抜では、昨年までの実績値よりも大幅に高く設定された私学進学枠を充足できず、また横浜市立高の定時制の統廃合による大幅な募集減などにより、県立高校の定時制に受験生が殺到。臨時クラス定員増でも収まりきらずに大量の不合格者を出し、行き場のない中卒者を多く生んでしまった。子ども達を救うという立場で考えれば、こうした問題の総括と改善を抜きに入選制度をいじるのは本末転倒である。また、学力検査によらない選抜の割合が増えると、どういうことがおこってくるか心配だ。現在でも、推薦入試枠の増加にともない、高校において大学入試のために委員会の長になりたがるという傾向がある。これと同じことが中学でも起こらないかどうかが、心配だ。
【中学生】 試験をやっていなくても、いつ勉強したのという感じで合格している先輩たちもいる。問題行動も起こしている。生きる力と言ったって、ちょっと風が吹いただけで倒れてしまう。個性が大事といっても節目節目にはやっぱり勉強が必要。推薦をやってもいいが、試験はやった方がいい。私たちを温室育ちにしないでください。
【中学生保護者】 推薦枠が拡大されるのはありがたいことだが、今まで以上に基準を明確にしてください。
【高校教員】 「選択の幅」とか「選択の機会の拡大」という言葉が随所で使われているが、それは嘘だ。実際には、同じ定員を複数の選抜枠に分けているだけで、各回の選抜試験の競争率は高くなる分、受験生の不安感は増し、それが長期にわたって続くことになる。しかも、その選抜の基準自体が、客観性に乏しいもので、事前に合格可能性を判断することが困難になる。進学率が100%近い高校入試では、大学やその他の入試と違い、受験生も保護者も中学側も、どこにも行き場のない状況を避けたいのは道理である。調査書の数値以外の記述や絶対評価が選抜に使われるようになると、合格可能性の予測はおろか、不合格の場合もその理由が納得ができないという事態が多く発生する。しかも、訳の分からない基準に自らを適合させねばならないという事態は、子どもたちの発達に限りない悪影響を与える。いいことは何もない。
【高校生徒】 推薦に賛成。勉強が苦手でも、推薦制度が有れば、自分の好きなこと、得意なことをいかせるのではないか。第一希望に一本化していくのに賛成。自分がいきたいところなら試験ででも納得をする。
【中学校教員】 何がどうよくなって変わるのか。具体的な変更点も全体像も、生徒にも保護者にも私たちにもまったくわからない。東京私立の推薦での統一テストのようなことは県内私立はやらないということだが、県立はどうなのか。県の情報センターの対応にも不満。県庁レベルの情報センターまで行かないとわからないといわれた。とにかく、現場にはきれぎれの情報しか伝わってこない。
●県教委答弁【高校教育課】 6月に公表できる。次年度入試は、制度的な変更はないが、絶対評価が入ってくる。総合的な学習の評価も調査書に入れることを、検討している。14年度は公開していく。
【保護者】 絶対評価を入試に使うことは問題だ。先生の主観評価、学校間の格差、全員に5をつけてしまうことはないのか。定期テストのチェック機関を作ってみたら。
●県教委答弁【高校教育課】 心配されている保護者が多いようだが、学校と保護者の関係の現状に問題がある。先生たちが保護者に信頼されなければならない。評価の基準は国も示している。これに従ってやりなさい。そうすればどこが恣意的か。同じ基準に沿ってやれば保護者からも信頼されるはずだ。(抗議の声が多数あがる。)
【県民・塾経営】学力低下の方策が示されていない。学力低下県になってからでは手遅れだろう。進学重点校をいち早く設定する東京都の動きがあるのに、遅すぎる。学力、個性の定義は別としてもテストの点数は学力の一部だろう。学力の低下は国力の低下。詰め込みは必ずしも悪ではない。
【中学保護者】 アテストみたいな県全体の位置が把握できるようなことの復活を望む。複数志願は賛成。それで助かった人もいる。中学でも2,3年の委員長争奪戦が激化している。全員を委員にしてはどうか。中学の先生には「できません」といわれたが。
【県立高校教員】 これは特色づくりのための選抜制度である。だから、中学校での学習は、受験する高校のための勉強という側面が強くなる。でも中学生に必要なのは、もっと普遍的な学習内容。どの学校でも受験できるような、一般的な学力の養成を。

県民フォーラム横浜会場

【中学校教員】 推薦制は、個性に応じた選抜であるので賛成する。しかし、推薦で不合格となったときのショックは大きい。現行の推薦制は、選考方法が違うだけで、(個性に応じた選抜である)推薦とは言えない。各高校の特色化は、各校の基準がわかりにくく、進路指導が不能である。学科・課程ごとに基準をパターン化してほしい。
【中学校教員・中学生保護者】 進路指導は2年生の2学期説明会から始まる。この時期に県民フォーラムをやっているようでは、3年生はもちろんのこと、2年生に対しても説明ができない。絶対評価は、3年2学期の評価を甘くすることとなる。学校間格差による差異が私立高や保護者の批判を買う。総合的選考は、人格的評価につながるので批判する。高校入試が、知識偏重となると「生きる力」の中学の評価と矛盾する。学習塾偏重となる。
●【県教委答弁】 入選再改革の開始は、来年度からと決めているわけではない。
【県民】 不登校生徒への視点が欠けている。選抜ではなく、入れることを前提とした制度に改革するべきだ。全日制の開門率をもっと広げよ。通信制の入学者が増加しているが、中学新卒者に対応できるシステムではなく、実質学習が保障されていない。公立高校は、全入制とし、卒業の可不可を各校で判断する制度に変えるべきだ。競争するべきは生徒ではなく、学校である。
【元県立定時制高校教員】 02入選では、定時制があふれた。募集計画の私学枠が実績よりも遙かに大きいためであり、実績進学率を低下させている。また、県立高校再編計画による総学級数減にも原因がある。以下を提言する。◇募集計画は実績に基づいて策定をする。◇計画進学率を達成するための再募集をおこなう。そのためにクラス定員枠増となるならば、そのための教育条件整備の措置を行う事。◇多段階選抜に不安を感じる声に応えて、これを見直す事。◇中学卒業式に進路未確定の生徒がいる状況を改善するため、全定入選を同日程とする事。
【市立中学校長】 推薦1/21、一般2/18という日程は、中学校現場に混乱を引き起こしている。中学校長会では、中学教育充実のために、一般日程を3月上旬にずらすことを要望しているので、考慮してほしい。絶対評価は、集団に準拠する評価である相対評価を、目標に準拠する評価に切り替えるものである。中学で絶対評価を取り入れる趣旨が入試に関連するとねじ曲がるおそれがある。取り扱いは慎重に願いたい。入試の弾力化は、一部教科偏重とならないように願いたい。生徒が希望する学校を受けられる推薦制(学力検査によらない選抜のことか?)には賛同する。同一志願が90%弱となっている複数志願制を廃止することには賛同する。
【定時制保護者】 市立高校では、市立定時制統合により(市立高校での)志願変更ができなくなり、多数不合格者を出した。(市立高校間での)志願変更ができるようにしてほしい。不登校の生徒からすれば、多段階選抜は、落ちる回数が複数となる制度である。
【中学校教員】 入選日程には考慮を願いたい。計画進学率達成のために、公立高校の開門率を広げるべきだ。
【県立高校生徒】 絶対評価を高校側がどう受け止めるのか。(高校入学後の)成績の見方が厳しくなるのか。生徒としては不安である。
●【県教委答弁】 絶対評価は、目標に準拠した学力を測るものである。人と比べてどれだけの順位にいるかという相対評価を脱して、学習指導要領に準拠した観点別に目標達成度を測る。観点については統一をし、評価法方法を公開する。一教員による評価ではなく、多数の教員の目を介した評価となる。
【中学校教員】 どのように選抜制度をいじろうと落とすための制度であることに変わりはない。希望者全入をまず基本として考えるべきである。
【中高生保護者・PTA役員】 入選システムが複雑すぎて分からない。丁寧に説明をしてほしい。希望者は全入にして、卒業を厳しくするというシステムを導入するべき。
【中学生保護者】 個性によって選ぶのは、高校の側ではなく、生徒の側である。そのためには、希望者全入として、公立高校の数を増やすべきである。現在、減らしているのはおかしい。
【高校教員】 高校複線化には反対する。受験生には心の傷となる。総合的選考は、人格を客観的に測ることはできないので、反対する。入選業務が過重負担であり、結局、在校生にしわ寄せがいっている。
【保護者】 学区入選協や県教委は、学校現場とどれだけ話し合ったのか。(会場より答弁を求める声多数)
●【県教委答弁】 諮問の趣旨は、一つには、県立高校改革推進計画をもととした各校の特色の進展に見合った選抜制度の策定であり、今一つには、現行選抜制度の問題点の改善である。希望者全入については、現行法制度では、選抜が前提となるのでできない。計画進学率は、進路希望調査をもとに妥当な数値を公立私立と話し合い決めている。(会場より非難の声多数あがった。)
【高校教員】 分かりやすいシステムではない。(学力検査によらない選抜は)大学入試の個別入試と同じであり、受験産業が隆盛するだけだ。独自入試の問題は誰が作るのか。各校が作るのであれば、またミスが続発だ。推薦制はすでに導入しているが、面接で差は付かない。計画進学率の説明が不十分である。明確に答弁せよ。
【中高生保護者】 子供が高校を選ぶという視点が欠けている。不登校や経済的理由で高校進学ができない子どもの視点が欠けている。内申書は、そうした子どもの個性、つまり、今まで評価の対象とならなかったよい面を表すものであってほしい。子どもが個性を表すには表現力が欠けている。小中の授業のあり方も考えるべきである。学区入選協の委員は、子どもと話し合ったのか。
●【県教委答弁】 計画進学率の策定については、公立全定通で95%台としている。10月進路希望調査で、99.4%が高校進学希望となっているので、公私あわせて99.4%の受け入れ枠を設けている。しかし、私立の実績と計画に差がある。今後の募集計画策定の上で十分に検討していきたい。

学区問題

県民フォーラム平塚会場

【中学校教員】 いまの25%は8%に戻すべき。今の制度は少しずつ変わってきているが理念はない。不信感がある。特色と言うが、早くから個性を決めて3科目しか勉強しない子供を作っていくのか。学区拡大に反対する。
【中学校教員】 長引く不況がこどもたちに影を落としている。家庭訪問すると、子供を近くの学校に通わせたいと言われる。多くの子供が高校に入ってから自分の特性をつくっていくのだ。入試のときばかり特色と言うな。
【高校教員】 私人の立場で。現在の学区をひろげ、できれば全県学区としてほしい。各現場では特色作りに努力している。目的意識、興味関心に基づいて学校を選んでもらいたいと思っている。
【高校教員】 学区拡大に反対する。生徒の家の経済状態は厳しい。交通費の負担も大変だ。公立学校は、地域住民が、自分の子供がここに入る、という気持ちからのサポートを失ってしまうとただの迷惑施設になってしまう。特色といっても、多くの生徒は高校に入ってから自分のやりたいことを見つけてゆくものだ。特別な者は学区外へ行っても良いが8%枠で充分だ。住まいの近くの高校へ入学できるような施策を。

県民フォーラム厚木会場

【高校教員・保護者】 学区拡大は競争激化。特色づくりは生徒の個性を尊重しているかと言えば、実態は全く逆。高校の授業・課外活動・生徒自身などすべてが商品として扱われるように高校間競争にさらされる。中学浪人も増加するだろう。そういうことを深刻な問題として考えられないのか。評価のための教育?毎日せわしない、余裕がない。競争激化にカネと人を使うより、30人学級の実現に力を使うべきだ。
【高校教員】 学区の拡大には反対。25%に拡大された学区外枠は、どういう学校でどの程度活用されているのか。職業高校は全県一学区だが、やはり近い学区から来る。学区外からはあまりこない。来たとしても、いやいやながらなど、長続きしない。子どもが地域で育つ。地域に開かれた学校づくり。高校も地域の中で育ってもらう。こういう方向性を是非打ち出してほしい。それが可能な地域とは学校の周辺。こういう観点で学区問題を考えてもらいたい。(●県教委:詳しいデータは手元にないとの答弁があった。)
【中学校教員】 制度が変わるときは生徒も保護者もわれわれも誰でも不安をいだく。私立の枠が埋まらない。公立の倍率が上昇した。生徒数が減っているのになぜなのだ。そうした状況をふまえた早めの計画の策定、計画進学率のきちんとした確保をおねがいしたい。高校進学は誰にでも公平に与えられた権利。学区拡大のメリット・デメリットをきちんとあげて聞かないと不正確なアンケート結果になる。学区は広い方がいいですか狭い方がいいですか、と単純に聞かれたら、普通は多くの人が広い方がいいと思ってしまう。たくさんの学校から選択できるから学区は無いほうがいいですと、なってしまう。私は基本的には学区の拡大や撤廃には反対だが、地区によっては事情が違ってくる。ある程度の数の学区外枠は必要かとも思うが、学区外枠が広がった事で、自分が行きたかった学校に行けなくなった事例も聞いた。複雑な要素をしっかり考えずに単純に学区拡大を打ち出すのはおかしい。
【中学校教員】 川崎は学区が半分。交通の不便があって、通うのが大変な生徒もいる。25%のせいで多少楽になった。市立もある。川崎市内のようなケースでは、行政区(市)は一学区でいいのではないか。
【高校教員】 学校設備の負担を、小さい学区できちんと保証を。選抜ということを前提にしていく改革でいいのか。学習指導要領を越えた特定研究をしていくようだが、トップ校がほとんどだ。選択枝が多い人間にとってはいいけれどそれは少数。学区拡大によって追いやられる生徒が多い。誰でもが安心していけるような改革の方向を。
【小学校教員】 学校生活全般や人格的な関わりの中で子どもは成長。保護者の経済状態で行ける、行けないという状態を作ってはいけない。遠距離通学の経済的負担も考えると、学区拡大には賛成しにくい。比較的近い、地元の学校へ行けるということを保証してあげたい。ただ、自分の生き方や進路の希望が強い子もいる。地域の学校に通いながらそうした希望を叶えられるような制度を。たとえば、地域の学校に学びたい教科や科目がなければ、その教科科目が開講されている他の学校に行ってその教科科目だけ受講するというように、子どもの興味や関心を伸ばすようなことも考えに入れながら学区のことを考えてほしい。
【高校教員】 学区拡大はこの会場では反対意見のほうが多いようだ。学校を選びたいという気持ちは分かるが、多くの国では、高校段階での学校教育が大衆化した時期に、生徒や保護者の「学校運営への参加」が保障されるようになった。しかし日本では、高校進学率が急上昇した時期にはそうした「学校参加の保障がなされず」、それとは裏腹に、高校数が増加したが学区にはあまり手がつけられず、一つの学区あたりの高校数が増えて高校選択の機会が拡大。参加ができないならせめて選択を、ということで生徒や保護者が納得をさせられて来た側面が強い。しかし、この学校への参加の欠如は、学校教育のさまざまな面に行き詰まりをもたらしている。こうして「開かれた学校づくり」の必要性が生じた。保護者・生徒の意見を十分組み入れて、教科・教科外を含めた教育計画・カリキュラムの策定が必要になる。最近始まった学校評議員制度は、今述べたことについて教職員・生徒・保護者・地域住民が腹を割って話し合う、よりは、教職員をチェック・評価する機能が強いのでは。これでは教育行政も含めた相互の信頼関係は築けない。学校が開かれる前提として、教育行政が開かれていく必要がある。先ほどのように、(入選制度の問題の時の答弁について)保護者と教職員の間に意見対立がないのに、さも対立しているかのように描き出し、対立をあおるようなことをやっているようでは、開かれた教育行政などできるのか。そもそも、この場で出されたさまざまな意見は、最終報告や行政施策に本当に反映されるのか。複数志願と総合的選考の導入時や県立高校改革推進計画の際の県民フォーラムでは、フロアの意見はほとんど無視された。今日ここへ来たことが無駄足にならないような策定を強く望む。

県民フォーラム横浜会場

【高校教員】 検討が不十分なまま制度を変えすぎだ。学区には手を付けるべきではない。01年度からの学区外枠25%拡大で、募集枠をオーバーしたのは3校のみで、少なくとも5年は現行のままやってみるべきだ。
【中高生保護者】 弾力化には不安がある。制度をいじり回し、子どもや親にプレッシャーをかけないでほしい。
【元中学校教員】 学区外枠25%拡大を8%に戻すべきであり、専門高校・新タイプ校全県学区を見直すべきである。すぐ近くの高校に行けなくなる子どもが出てくる。高校は地域に根ざした学校を目指すべきである。高卒資格がなければ就職もできない。定時制の混乱は行政の責任である。希望者全入の視点を持つべきである。
【中学校教員】 現行学区の据え置きを希望する。地元地域の子どもが来ていないため、学校評議員のなり手がいない高校があると聞く。地域の中の学校を目指すべきである。
【県立高校生徒】 全県学区の高校生だが、25%学区外枠には賛同している。(学校で)他の地域の人たちとの出会いを求めたい。中学では、学区外への進学が増大していると聞く。しかし、学区撤廃までに至るのは反対である。もうしばらく現行25%枠を継続せよ。
【市議会議員】 学区に関するデ-タがなく、問題点が何なのかが不明確である。学区拡大のみが先行している。卒業生・在校生の声をもっと聞くべきだ。自分の出身校は再編によって廃校となったが、大変悲しいことである。
【もと中学校教員】学区拡大は、(学校間競争によって)優良な高校に金をかけ、他に金をかけないための方策なのではないか。神奈川総合高校は、15〜6人規模のレッスンクラスが主体で冷暖房完備と聞く。他の全日制普通科高校は、40人クラスでの授業が主体である。不公平ではないか。