高総検レポート No 72

2005年3月16日発行

「高総検前期再編アンケート」集計結果からの後期再編の課題

 

高総検は、前期再編計画で2校統合方式によって開校した新校の教職員に対して、前期再編計画全般を通じてのアンケートを依頼し、10校・125名の回答をいただいた。このアンケート結果をご覧になり、後期再編校の一助にしていただけたらと思う。後期再編計画の完成は2012年であり、職場に大きな影響を与え続ける。そのため再編校ではどういうことが問題になっているのか、神奈川全体の教職員が共通の認識を持っていることが大切である。
 なお、高総検では以下のように課題を整理し、それに対する対処法を考察してみた。



■移行期についての課題■

 @「生徒同士の交流の機会」 A新校カリキュラム

 移行期は統合直前の2年間を指すが、この時期の課題として多かったのが、上記の2点である。「生徒同士の交流」は、合同の球技大会や遠足、文化祭への招待、合同学年レクレーションなどが実施される。しかし、生徒・教職員とも自校意識が現れてしまい、逆に反目してしまうこともある。部活の交流(合同部活)などの方が生徒がスムーズに交わることがあるが、学校間が離れていると移動時間や交通費がかかる。
 移行期には、生徒交流用のバスの予算が計上されるが、部活だけでは運行が認められない。授業交流や行事を行うためのものなので、計画を早期に立てることが求められ、なかなか日常的な生徒交流のための手段にはならない。
 課題は多くとも、統合が決まっている以上、生徒同士の交流の機会を多く作ることが求められている。移動時間の短縮には、やはり生徒交流用のバスを利用することが一番である。例えば、授業交流は一部の選択者同士でも認められる。それにバスを利用し、放課後はそのバスを部活の生徒が利用する。こうすれば一石二鳥である。そのためにも移行期は両校とも交流ができるようなカリキュラムにしておくといいだろう。
 次に多かった課題は、新校カリキュラムである。この難しさは、@単位制A総合学科B系や系列CフレキシブルD総合技術、といった従来の普通科や専門学科のようなカリキュラムとは違ったカリキュラムを作るという難しさであろう。どういう教育理念を持ってカリキュラムを作るのかも含め、教員集団がなかなか理解を共有できないため、新校カリキュラムを作成するのは混沌とする。校長が新校=進学校というイメージを持っていると、新タイプ校を作るということがどういうことなのか混迷する。再編計画が高校改革の一つならば、今の高校に在籍している生徒を元に新タイプ校の教育理念を掲げ、新校カリキュラムを作るということになるのではないだろうか。
 再編が決まると、新しいカリキュラムが作られることになるが、新校開校と共に従来と大きく変更されたカリキュラムが施行され、教員がとまどいを感じたり、授業準備に忙殺されることになる。そう言う状態にならないように、新校の完成年度(開校から3年目)を見据えて、移行期に入る前から少しずつ新しい試みを実践していくことが必要だと思われる。特に総合学科の「産業社会と人間」は学校外との関わりが大きい上、必修科目であるので、誰もが担当できる科目にしていかなくてはなるまい。無理のないカリキュラム作りを進めていくことが生徒のためにも職場のためにも大切である。
 また、総合学科や単位制高校に見られる系や系列、総合技術高校などについて、再編該当校の教職員が理解するためには、多くの研修が必要であろう。

 「不利益を被る」は83名(66.4%)

 移行期生が不利益を被るという回答は83名にもおよび、多くの教職員がこのように感じている。それは、教職員の忙しさによる生徒に関わる時間の喪失、移行期カリキュラムに新校カリキュラムの一部が前倒しされることによる「試行」的な要素の増大、生徒減による部活や学校行事の衰退化ということによる。これらは、2校統合形式では、必然であり、どうにもならない事実である。特に移行期間は、教員の定数減が進むので、教職員の忙しさはそれまでとは比較にならない。
 しかし、新校が開校すると、生徒数が倍になるので、生徒にとっては斬新で、生き生きとしてくる。部活も急に活発になる。6月に体育祭が実施されると生徒同士の交流が増え、学校としてのまとまりができてくる。学校行事の盛り上がりは、移行期生にしか味わえないメリットであろう。
 移行期生がもっとも不利益を被るのは、移行期間であろう。その間にいかに教育の保証をしていくかということが課題になる。それに対してできることは、事前に移行期間のカリキュラムを綿密に検討して作り上げ、実践して行くしかない。部活や学校行事の衰退はどうにもならない。早期の合同チームの立ち上げや合同の行事の開催(球技大会)等くらいだろうか。ただ、余り早過ぎると移行期生より前の学年が不利益を被ることになる。
 
 合同選抜には難しさ?

 再編統合する場合の大きな困難の一つとして、2校間の学力差があげられる。それを回避するために考えられたのが、「合同選抜」である。しかし、今回のアンケートでは「合同選抜」に賛成は39(31.2%)にとどまった。43(34.4%)の「どちらともいえない」という声に合同選抜の難しさが表れている。「合同選抜」による事務作業の増大や合格者の振り分けの難しさが懸念されている。
 結局は、統合時に混合クラスにすることで乗り切るしかないだろう。その際の担任や教科担当者は生徒の対処に留意することが肝要である。

■統合してからの課題■

 @「職員間の意識の相違」 A「新しい組織作り」 B「学校行事の運営」

 統合してからの課題で多いのが「職員間の意識の相違」である。これまでやってきたことがご破算となり、新校になってすべて一からスタートすることになる。しかし、新校の教職員の8割以上は統合該当校からの転任であるため、どうしても「前の学校」のやり方を踏襲してしまう面がある。会議の場で「昨年までは〜」という枕詞がふと出てしまうこともありがちである。
 そのためには、統合以前に両校の分会同士の交流の機会を増やし、お互いの職場の雰囲気を理解し、新しい学校を作る一歩にすることが大切であろう。例えば、合同の分会教研などが考えられよう。
 新しい組織作りとして、県から新校向けの分掌等が提示され、それに則って作られる。中でも「教務部」は「研究開発部」「学務部」「情報管理部」に分けられ、その境界があいまいで、なかなかうまく機能しないことがある。また、分掌毎に仕事量の差も大きい。年度毎に総括した上で、仕事の振り分け等を検討する必要がある。また、分掌・主任はすべて校長が決めるというシステムに戻されてしまうので、校内人事委員会の設置を要求していくことが必要になる。
 学校行事の運営は、どちらかの元の学校のカラーになりがちであるので、すべてリセットしてやっていくという合意が必要である。分会を中心に職場の雰囲気作りをしていくことが大切である。

■2校統合方式■

 「いいえ」と「どちらとも言えない」で99名(79.2%)

 仕事量の増大から、否定的な意見が多いのはやむをえないだろう。とにかく前期再編は忙しかったし、県の姿勢もあいまいでそれだけでも大変だった。
 2校統合方式を前期計画と全く同じやり方で実施するのは無理があろう。しかし、廃校方式を採用すれば、廃校になる生徒や卒業生がまるで無視されるような結果となる。
 新校開校は結局のところ2校とも廃校になることは間違いない。そこを押さえた上で、2校からいいもの(特色)を新校に引き継いでいこうという合意をすることが出発点になるのではないか。新校準備委員会やワーキングで実のある議論ができるように、まず教職員が「自校意識」をなくすことが大事かも知れない。

■再編を進める上での大切なこと■


 @「新校準備委員会と職員会議の連携」 A「県からの財政面での支援」

 新校準備委員会が管理職の意向ばかり重視し、職員会議で意見を吸い上げないという声が多かった。準備委員会がさまざまな決めきりに追われて忙しいとはいえ、そこから再編計画が崩れていくことは明らかである。後期計画では、まず決定する前に職員会議に情報を流し、意見・要望を受け入れることが大事である。そのためには新校準備委員会に分会員が入ることが必要である。
 県からの財政面での支援は、基本は「お金がない」から入って行くが、最後の最後でガラッと変わることがある。特に施設面の整備や特色ある科目の立ち上げについては県も考えているようだ。どういう状況になっても最後まであきらめないことが大切である。

 その他、90分授業や司書の本の整理の大変さ、学校設定科目の立ち上げなど課題はたくさんある。このような課題に対し、分会員が一つひとつ関心を持って対処していくことが求められよう。後期計画はシラバスつくりや生徒による授業評価などとともに実施される。その中で分会はどのように再編に取り組むべきかという議論も必要になろう。



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